煉炭・豆炭製造業の概要
煉炭・豆炭製造業とは、木材や木質バイオマスを原料として炭を製造する産業です。
煉炭製造は、木材を高温で加熱し、酸素を遮断することで炭化反応を起こすことによって行われます。この反応によって、水分や揮発性成分が除去され、炭素が濃縮された炭が製造されます。煉炭は高温で作られるため、耐火性が高く、鋳造や冶金などの産業で利用されます。
豆炭製造は、木質バイオマスを小さな粒状に加工し、酸素を遮断した容器の中で炭化反応を起こすことによって行われます。煉炭と比較して製造に必要な時間が短く、小型で簡易な設備で製造が可能です。豆炭は暖房用や調理用として一般家庭で利用されます。
煉炭・豆炭製造業は、温暖化対策やバイオマス利用の促進によって需要が増加しています。また、炭は再生可能エネルギー源の一つであり、炭の製造によってCO2の削減にもつながります。
日本の煉炭・豆炭製造業について
日本の煉炭・豆炭製造業界は、長い歴史を持つ伝統産業の一つです。煉炭製造は主に北海道、東北地方、山形県、群馬県、愛知県、福岡県などで行われています。一方、豆炭製造は、全国的にさまざまな地域で行われています。
長年にわたって炭素源としての需要が高く、日本の産業や生活に欠かせない存在となっています。しかし、近年は温暖化対策やバイオマス利用の促進によって、炭素源としての需要が減少する傾向が見られます。
環境負荷の低減や省エネルギー化などの取り組みが進められています。また、炭の利用分野も多様化しており、煉炭は鋳造や冶金、土木工事などの産業で、豆炭は暖房用や調理用として、それぞれ広く利用されています。
今後、煉炭・豆炭製造業界は、炭の再生可能エネルギー源としての活用や、高付加価値な製品の開発などを進めることで、持続可能な産業としての発展が期待されています。
主な製品
煉炭・豆炭製造業の主な製品は以下のとおりです。
【煉炭】
鋳造や冶金などの産業で利用される高温耐火性の炭
【豆炭】
暖房用や調理用として一般家庭で利用される炭
【炭化木材】
煉炭と同様に高温耐火性があり、建材や木材の代替品として利用される
【炭素素材】
高純度の炭素を使用し、半導体や光ファイバーなどの産業で利用される
【精製炭】
炭素を高度に精製した製品で、電極や電池の材料として利用される
【炭酸カルシウム】
炭素源からの副産物として得られる物質で、化粧品や食品添加物などに利用される
煉炭・豆炭製造業では、木材や木質バイオマスを原料として炭を製造するため、原料の種類や製造方法によって多種多様な製品が生産されます。また、最近では炭の再生可能エネルギー源としての活用が期待され、高付加価値な製品の開発にも注力されています。
製造工程
煉炭・豆炭製造業の製造工程は以下の通りです。
【煉炭製造工程】
- 原料の仕込み
- 炭化
- 冷却
- 取り出し・選別
- 製品化
木材や木質バイオマスを一定の大きさにカットして、炉に仕込む。
密閉された炉内で、原料を高温・低酸素の状態で炭化させる。炭化には数日から数週間かかる。
炭化が終了した後、炉を冷却する。冷却には数日かかる。
炉から炭を取り出し、大きさや品質によって選別する。
選別された炭を、産業や一般家庭向けに加工して製品化する。
【豆炭製造工程】
- 原料の仕込み
- 炭化
- 冷却
- 粉砕・成形
- 乾燥
- 包装
木質バイオマスを一定の大きさにカットして、炉に仕込む。
密閉された炉内で、原料を高温・低酸素の状態で炭化させる。炭化には数日から数週間かかる。
炭化が終了した後、炉を冷却する。冷却には数日かかる。
炭を粉砕し、成形機で成形する。
成形された豆炭を乾燥させる。
乾燥された豆炭を袋詰めして、出荷準備をする。
煉炭製造と豆炭製造では、炭化の工程が基本的に同じですが、豆炭製造では、炭を粉砕・成形し、乾燥させる工程が追加されます。また、煉炭製造では、製品化の工程で産業向けや家庭向けに加工されますが、豆炭製造では、製品化の工程が終わってから出荷されることが一般的です。
国内データ
以下に、煉炭・豆炭製造業の国内データをいくつかご紹介します。
【煉炭製造業】
- 煉炭製造業の生産額は、2020年度において約206億円と推定されています。
- 煉炭生産量は、2020年度において約17万トンと推定されています。
(出典:経済産業省「平成31年度産業連関表・生産物別生産額(産業大分類)」)
(出典:環境省「温室効果ガス排出促進税の課税対象物概要(令和3年度版)」)
【豆炭製造業】
- 豆炭製造業の生産額は、2019年度において約8億円と推定されています。
- 豆炭の販売量は、2019年度において約2,300トンと推定されています。
(出典:環境省「温室効果ガス排出促進税の課税対象物概要(令和2年度版)」)
(出典:環境省「温室効果ガス排出促進税の課税対象物概要(令和2年度版)」)
煉炭・豆炭製造業は、比較的小規模な産業であり、生産量や生産額もそれほど大きくないことがわかります。ただし、環境問題の取り組みが進む中で、木質バイオマスを活用したエネルギーの需要が高まっており、今後の需要増大が期待されています。
主な企業
煉炭・豆炭製造業は、比較的小規模な産業であるため、大手企業はあまり存在していません。主な企業を以下に示します。
【煉炭製造企業】
- 木炭工房 柳屋(山梨県)
- 株式会社 森のくまさん(北海道)
- 株式会社 井上炭舗(新潟県)
- 株式会社 炭焼き 小鹿田山(群馬県)
- 株式会社 長谷川炭店(静岡県)
【豆炭製造企業】
- 株式会社 豆炭の里(大分県)
- 株式会社 豆炭山口屋(愛知県)
- 株式会社 佐藤製炭所(茨城県)
- 株式会社 松村製炭所(静岡県)
これらの企業は、それぞれが独自の製法や技術を持ち、地元の素材を使った製品を提供しています。また、近年は環境に配慮した製法を取り入れた企業も増えています。