銑鉄鋳物製造業の概要
銑鉄鋳物製造業とは、鉄鉱石を鉄に変換し、その鉄を溶かして、金属型に流し込んで製造される鋳物製品を生産する産業のことを指します。銑鉄は、高炉などで鉄鉱石を石灰石やコークスとともに加熱して取り出された鉄のことで、その銑鉄を原料として鋳物を製造します。
自動車や建築資材、家電製品、船舶、鉄道車両など、多くの産業で使用される部品や機器を製造しており、産業の中でも重要な位置を占めています。製造工程は高度化しており、CAD/CAMを利用した製造や、ロボットによる自動生産なども進んでいます。
日本の銑鉄鋳物製造業について
世界的に見ても非常に高い技術力と品質を誇り、自動車や航空宇宙、産業機械、建築資材など、多くの産業分野において重要な役割を果たしています。
特に自動車産業においては、高い性能や安全性を求められるエンジンブロック、シリンダーヘッド、クランクケース、サスペンションアーム、ブレーキキャリパー、ホイールなど、多種多様な部品が鋳造されています。
また、日本の銑鉄鋳物製造業界は、環境負荷の低減にも取り組んでおり、省エネルギーや再利用などの取り組みを進めています。
しかし、国内外からの競合や、原材料価格の上昇など、様々な課題も抱えています。今後は、技術力の更なる向上や、グローバルなマーケットへの進出などが求められています。
主な製品
銑鉄鋳物製造業の主な製品には、以下のようなものがあります。
【自動車部品】
エンジンブロック、シリンダーヘッド、クランクケース、ブレーキローター、サスペンションアーム、ホイール、トランスミッションケースなど。
【産業機械部品】
ギヤボックス、ベアリングハウジング、油圧シリンダー、ポンプハウジング、バルブ、フランジなど。
【建築資材部品】
排水溝、マンホール、防音壁、シャッターボックス、排水パイプ、ハンドレールなど。
【船舶部品】
スクリュー、スタビライザー、バルブ、船底、船体など。
【鉄道車両部品】
ブレーキディスク、ハブ、台車、フレーム、カプラー、パンタグラフなど。
これらの製品は、鋳造技術の高度化によって、より高い品質や精度が求められています。また、省エネルギーや環境負荷の低減を考慮した製品の開発も進められています。
製造工程
銑鉄鋳物製造業の製造工程は、大きく以下のように分かれます。
- 原料の準備
- 鋳型の製作
- 鋳造
- 冷却・取り出し
- 加工・仕上げ
鉄鉱石やスクラップなどの原料を受け取り、適切な大きさに破砕したり、選別したりします。また、鉄鉱石を高炉で溶かして銑鉄を製造する場合には、高炉内に原料を投入して加熱・還元する工程があります。
製品の形状に合わせた金属型を製作します。この際、CADやCAMを利用することで、高度な精度を持った金型が製作されます。
銑鉄を溶解し、金属型に流し込んで製品を形成します。この際、鋳造機械や自動化装置を利用して自動鋳造を行うこともあります。
金属型内で流し込んだ銑鉄を、冷却して製品を取り出します。この際、製品表面にバリやすじあとができることがありますが、後述の加工によって取り除かれます。
鋳造製品は、冷却後に表面を削ったり研磨したりすることで、精度を上げたり、表面仕上げを行います。また、加工によって部品の形状を調整したり、穴あけや切削加工を行ったりします。
以上が、一般的な銑鉄鋳物製造業の製造工程です。製品によっては、この工程に加えて、塗装や表面処理などの工程が追加される場合もあります。
国内データ
日本の銑鉄鋳物製造業の国内データを以下に示します。
- 2020年の鋳造生産額:約1,266億円
- 2020年の鋳造生産量:約1,634,000トン
- 従業員数:約63,000人
- 主要生産品目:自動車部品、産業機械部品、建築資材部品、船舶部品、鉄道車両部品など
- 生産地域:主に中部地方(愛知県、岐阜県、静岡県)、関西地方(大阪府、兵庫県)、東北地方(宮城県)など
なお、近年は環境対策や省エネルギー技術の発展に伴い、軽量化や高強度化、低炭素化などを目的とした製品の開発が進められています。また、自動運転技術の発展に伴い、車載用センサーや電動化に対応した製品の需要が増加しています。
主な企業
日本の銑鉄鋳物製造業の主な企業には、以下のような企業があります。
- 日鉄住金鋳造株式会社
- 住友金属工業株式会社
- 神戸製鋼所株式会社
- 日本製鉄株式会社
- JFEスチール株式会社
- 大同特殊鋳鋼株式会社
- 東邦鋳鉄株式会社
- 西田鉄工所株式会社
- 大平洋金属工業株式会社
- 昭和高鋼株式会社
これらの企業は、自動車部品や産業機械部品、建築資材部品、船舶部品、鉄道車両部品など、様々な分野において製品を供給しています。また、これらの企業は海外展開も進めており、世界各地で事業を展開しています。