電線・ケ-ブル製造業の概要
電線・ケーブル製造業は、電力伝送や通信などに使用される電線・ケーブルを製造する産業です。電線・ケーブルは、銅やアルミニウムなどの導体と、プラスチックやゴムなどの被覆材から構成されています。
住宅や工場などで使用される配線から、地下や海底を通る長距離の電力伝送や通信に使用される高電圧ケーブルまで、幅広い用途で使われています。また、近年では再生可能エネルギー発電や電気自動車などの普及に伴い、需要が増加しています。
電線・ケーブル製造業は、安全性や信頼性が非常に重要なため、高度な技術力や品質管理が求められます。
日本の電線・ケ-ブル製造業について
日本の電線・ケーブル製造業界は、世界有数の製造量と技術力を誇っています。主要な企業としては、住友電工、日本電気硝子、日立金属、三菱電線工業、日本特殊陶業、フジクラ、岩谷産業などが挙げられます。
これらの企業は、高品質な製品を世界中に供給しており、特に高圧ケーブルや光ファイバーケーブルなどの分野で高い技術力を持っています。また、省エネルギーを実現するための製品や、再生可能エネルギーに適した製品の開発にも注力しています。
一方で、国内市場においては需要が低迷している傾向にあります。これは、需要が飽和状態にあるためや、海外からの低価格な輸入品の影響があるためです。しかし、新たな需要の創出や海外市場の開拓によって、業界の発展が期待されています。
主な製品
電線・ケーブル製造業の主な製品には以下のようなものがあります。
【電力ケーブル】
発電所から送電線を介して送られた電力を、変電所や家庭などに届けるためのケーブルです。低圧から超高圧まで様々な種類があります。
【通信ケーブル】
電話線やインターネット回線など、通信に使用されるケーブルです。光ファイバーケーブルも含まれます。
【自動車用ケーブル】
車両の配線に使用されるケーブルで、車内の各種電子機器やエンジンの制御に使われます。
【情報通信機器用ケーブル】
パソコンやスマートフォンなど、各種情報通信機器に使用されるケーブルです。
【機械用ケーブル】
産業機械や工作機械などに使用されるケーブルで、モーターやセンサーなどを制御するために使われます。
【電子部品用ケーブル】
半導体製造装置やディスプレイ製造装置など、電子部品の製造装置に使用されるケーブルです。
これらの製品は、導体や被覆材の素材や構造が異なるため、用途に応じて特性や性能が異なります。
製造工程
電線・ケーブル製造業の一般的な製造工程には、以下のような工程があります。
- 材料の準備
- 導体の製造
- 被覆材の製造
- 芯線の組み立て
- ケーブルの組み立て
- 試験・検査
- 出荷
導体、被覆材、芯線、保護管などの材料を選定し、切断・加工などの準備をします。
銅やアルミニウムなどの金属を導体として使用する場合、まず金属を線材に加工し、その後導体の形状に加工します。
導体の周りに被覆材を巻き付けるためのプラスチックやゴムなどの材料を、専用の機械で製造します。
導体と被覆材を組み合わせて、芯線を組み立てます。この際、必要に応じて絶縁材やシールド材を巻き付けます。
芯線を中心に、必要に応じて保護管やアーマーなどの材料を巻き付け、最終的にケーブルを組み立てます。
製品の品質を確保するために、導電性や絶縁性などの各種試験や検査を行います。
最終的な製品検査を行い、問題がない場合に出荷します。
以上が一般的な電線・ケーブル製造業の製造工程ですが、製品の種類や用途によって異なる場合があります。
国内データ
以下は、電線・ケーブル製造業の日本国内における主な統計データです。
- 2020年の国内市場規模
- 2020年の国内生産額
- 2020年の輸出額
- 雇用者数(2020年)
- 主要製品のシェア(2020年)
約2,130億円
(日本電線ケーブル工業会調べ)
約1兆7,700億円
(総務省統計局調べ)
約1,500億円
(総務省統計局調べ)
約12万人
(厚生労働省労働力調査)
電力ケーブルが約36%、通信ケーブルが約24%、自動車用ケーブルが約20%、情報通信機器用ケーブルが約6%、機械用ケーブルが約4%、電子部品用ケーブルが約3%
(日本電線ケーブル工業会調べ)
これらのデータから、電線・ケーブル製造業は、日本の製造業の中でも比較的小規模な産業ではありますが、国内外で需要がある重要な産業の一つであることがわかります。
主な企業
日本の電線・ケーブル製造業の主要企業としては、以下のような企業があります。
- 住友電工株式会社
- 日立金属株式会社
- 三菱電線工業株式会社
- パナソニック株式会社
- 日本電線株式会社
- 富士電線株式会社
- 日本特殊陶業株式会社
- 信越化学工業株式会社
- 日本製鉄株式会社
- 日本ケーブル株式会社
これらの企業は、電力・通信・自動車・航空宇宙など様々な産業に向けて電線・ケーブル製品を供給しています。また、世界各地に生産拠点を持ち、グローバルな展開を行っている企業もあります。