造作・合板製造業

木材・木製品製造業
  1. 造作・合板製造業の概要
  2. 日本の造作・合板製造業について
  3. 業界の課題と改善動向
    1. 1. 原材料価格の高騰と調達難
    2. 2. 労働力不足と技能継承
    3. 3. 小ロット・多品種化への対応
    4. 4. 環境対応・品質認証への対応
  4. 最新の技術動向・省力化への取り組み
    1. 1. CNC加工機による高精度加工の自動化
    2. 2. プリカット対応と連携したデジタル工程管理
    3. 3. ローラーコンベア・搬送装置による搬送作業の負担軽減
    4. 4. 表面仕上げ工程の自動化・一貫処理
    5. 5. 生産管理と品質データのIoT連携
  5. 海外市場・輸出入の動向
    1. 1. 日本の合板輸入動向(2023年時点)
    2. 2. 輸出市場と動向
    3. 3. 円安と国際物流の影響
    4. 4. 輸入材から国産材への回帰も進行中
  6. 今後の展望と政策支援
    1. 1. 国産材の活用と林業連携による自給率向上
    2. 2. 木材利用に関する法制度の追い風
    3. 3. DX・スマート工場への対応
    4. 4. 脱炭素・環境対応への強化
    5. 5. 若手・女性・外国人材の受け入れと教育体制整備
  7. 関連業界との連携事例
    1. 1. 木造建築業界との連携:地域型住宅ブランドとの共同開発
    2. 2. インテリア・家具業界との連携:化粧合板の高付加価値化
    3. 3. プレカット工場・建材流通業との連携:物流効率と施工合理化の支援
    4. 4. 塗装・化学業界との連携:難燃・防カビ・抗ウイルス対応製品の開発
    5. 5. 海外建材商社との協業:輸出対応規格の共同取得と販路拡大
  8. 主な製品
  9. 製造工程
  10. 国内データ
  11. 主な企業

造作・合板製造業の概要

造作・合板製造業とは、木材を加工して家具や建材などの木製品を製造する産業であり、その中でも特に合板を製造する業種を指します。

合板は、薄い木材の板を重ね合わせて接着剤で固めたもので、木材をより効率的に利用することができるため、建材や家具、車両などの製造に広く使用されています。また、高強度や防火性などの特性を持った合板もあり、建築現場や船舶、航空機などの産業において重要な役割を果たしています。

一方、造作とは、建物や家具などを現地で加工し、加工済みの材料を現場で組み立てて完成品を作り上げる技術のことを指します。したがって、造作・合板製造業とは、木材を原料として加工し、その製品を建築現場や家具工場などに提供する産業となります。

日本の造作・合板製造業について

日本の造作・合板製造業は、長い歴史と伝統を持ち、世界的に高い評価を得ています。日本の木材は、世界でも屈指の品質を誇り、その素材を活かした製品が多く生産されています。

具体的には、日本の造作・合板製造業では、建築現場においては、屋根材、壁材、床材などの建材や、梁や柱などの構造材が製造されています。また、家具産業では、和風家具や洋風家具など、さまざまなタイプの家具が製造されています。さらに、自動車産業においても、車体や部品の製造に合板が使用されています。

近年では、環境に配慮した木材の利用や、合板の耐震性の向上などに注力し、高品質な製品を生産するための技術開発や研究開発が進められています。また、地域に根ざした木材利用の推進や、人材育成にも力を入れているため、日本の造作・合板製造業は、今後も世界でも注目される産業として発展していくことが期待されています。

業界の課題と改善動向

造作・合板製造業は、住宅建築や内装材の供給を支える重要な産業ですが、近年は複数の課題に直面しています。特に以下のような構造的な課題が顕在化しており、それに対応する改善の取り組みも進んでいます。

1. 原材料価格の高騰と調達難

国産材および輸入材の価格が高騰しており、特にラワンやシナ、カバノキなどの合板原料となる広葉樹系単板の調達が不安定です。ロシア・ウクライナ情勢の影響でロシア産単板の輸入が困難になり、マレーシアやインドネシアなどからの調達に依存する傾向が強まっています。

改善策としては、国産材の利用促進(特にスギやヒノキの合板利用)、JAS認証による安定調達の確保、持続可能な林業との連携強化が図られています。

2. 労働力不足と技能継承

造作材の加工や合板の仕上げは、高度な木工技術や目利き力が求められる工程が多く、熟練工の高齢化と若手の入職減が大きな課題です。特に中小製造業では、手作業比率が高いため、若手への技術継承が追いついていない現場も多く見られます。

改善の方向性として、多能工化教育の実施、技能検定制度の活用、現場OJTの体系化、ICTを活用した工程可視化などが導入され始めています。

3. 小ロット・多品種化への対応

近年の住宅需要は、大量生産型からカスタマイズ志向へと変化しており、造作材や合板製品にも「特注寸法」「特殊仕上げ」「塗装済み対応」など、多品種・小ロット生産への柔軟性が求められています。

そのため、従来の大型ライン生産だけでなく、NCルーターや自動プレカット機の導入によるフレキシブル対応力の強化が進められています。

4. 環境対応・品質認証への対応

F☆☆☆☆(フォースター)などのホルムアルデヒド放散量規制、合法木材・持続可能材認証(PEFC・FSC)の取得が、サプライチェーンの中で標準化されつつあります。

これに対応するためには、合板の接着剤や表面処理剤の見直し、認証材の導入、環境基準対応の社内体制整備が必要であり、業界全体としても共同での基準統一や共同調達が模索されています。

最新の技術動向・省力化への取り組み

造作・合板製造業は、かつては手作業中心の職人技に依存していましたが、近年はデジタル技術や自動加工機の導入によって、省力化・効率化の動きが加速しています。ここでは、実際に現場で導入されつつある主な技術トレンドを紹介します。

1. CNC加工機による高精度加工の自動化

従来、建具や枠材、カウンター天板などはベテラン職人が手作業で調整していましたが、現在ではCAD図面に基づくCNC(コンピュータ数値制御)加工機の導入が進んでいます。

特に、複雑なR加工や異形パネル切断にも対応できる5軸制御タイプの導入が進んでおり、「寸法精度±0.1mm」「加工時間30%削減」といった効果が報告されています。

2. プリカット対応と連携したデジタル工程管理

造作材と構造材の工程連携のため、住宅プレカット業者とのデータ連携を行う工場も増加しています。これにより、造作材の加工手配をBIM/CAD連携で自動生成し、工場側では即時の機械設定が可能になります。

結果として、「加工指示書の手作業ゼロ」「誤発注リスクの低減」「トレーサビリティ対応の迅速化」が実現されています。

3. ローラーコンベア・搬送装置による搬送作業の負担軽減

合板や集成材など、1枚20~30kgを超える板材を扱う現場では、省人化の鍵として「自動搬送装置」が注目されています。自走式コンベアラインやリフター付き集積台車の導入によって、「腰痛リスクの大幅軽減」「作業者2名→1名化」が可能になっています。

4. 表面仕上げ工程の自動化・一貫処理

造作・合板製造業の中でも特に人手を要していたのが「サンディング・塗装・乾燥」工程です。現在は、ワイドベルトサンダーによる全自動研磨機や、UV乾燥装置、スプレー塗装ロボットなどの導入が進み、「ムラのない均一な仕上がり」「1日あたりの加工枚数3倍」などの成果を上げています。

5. 生産管理と品質データのIoT連携

品質安定や納期管理のため、IoTセンサーを活用したリアルタイムモニタリングも導入されています。合板の含水率測定器や、プレス温度・時間を自動記録するロガー機器などにより、「出荷時の品質証明」「不良発生時の原因追跡」が容易になっています。

海外市場・輸出入の動向

造作・合板製造業は、その素材である合板・集成材・MDF(中質繊維板)などが世界的に流通しているため、グローバル経済や需給バランスの影響を大きく受ける業種のひとつです。特に、住宅用内装部材や家具素材としての輸出入は、アジアを中心に年々増加傾向にあります。

1. 日本の合板輸入動向(2023年時点)

  • 合板全体の約70%以上を輸入に依存(財務省貿易統計)
  • 主な輸入国:インドネシア・マレーシア・中国・ベトナム
  • 用途別では、建築内装材・家具用素材・仮設材用が中心

インドネシアやマレーシアは、持続可能な森林認証制度(SVLK、PEFCなど)を整備しており、日本の輸入業者も環境認証付き製品を優先的に取り扱う傾向が強まっています。

2. 輸出市場と動向

一方、日本からの造作・合板製品の輸出はまだ限定的ながら、東南アジア・中東・北米への進出が徐々に進んでいます。

特に、高品質な化粧合板・突板貼り造作材・意匠性を重視した建築内装材は、「Made in Japan」として評価が高く、ホテル・店舗・住宅の高級仕様案件で採用されるケースが増えています。

3. 円安と国際物流の影響

2022〜2024年の円安傾向は、輸入コストの上昇というデメリットをもたらす一方で、輸出競争力の向上という側面もあります。特に、国内の木材加工技術や職人仕上げの高付加価値品は、アジアや中東市場において強みを発揮しています。

ただし、海上輸送の混雑やコンテナ不足といった国際物流課題は依然として残っており、納期・在庫管理面での柔軟な対応が求められています。

4. 輸入材から国産材への回帰も進行中

近年、建築基準法の改正やSDGs意識の高まりを背景に、スギ・ヒノキをはじめとする国産材による合板や造作材の需要も拡大しています。国産材の使用促進に関する補助金制度(例:CLT普及事業)などの政策支援もあり、「脱・輸入材依存」への取り組みが広がっています。

今後の展望と政策支援

1. 国産材の活用と林業連携による自給率向上

造作・合板製造業においては、国産材(スギ・ヒノキ・カラマツなど)を活用した製品開発が今後のカギとなります。これまで輸入合板に依存してきた構造から脱却し、持続可能な国産材の活用にシフトすることで、木材自給率の向上と地域経済の活性化が期待されています。

林野庁は「ウッド・チェンジ」推進事業や「国産材利用拡大対策」を強化しており、合板製造事業者と地元製材業・森林組合との連携モデルが各地で進行中です。

2. 木材利用に関する法制度の追い風

  • 木材利用促進法(2021年改正):公共建築物での木材使用を民間にも拡大
  • 建築基準法の緩和:中高層建築へのCLT・LVL利用が可能に
  • ゼロカーボン建築の支援制度:木造比率の高い設計に対する補助金あり

これにより、今後は従来の造作材に加え、中断面合板や耐火化処理を施した合板製品の需要増が見込まれています。

3. DX・スマート工場への対応

木材加工業界にも、スマートファクトリー化の波が押し寄せています。合板製造工程のうち、貼り合わせ・成形・仕上げ加工・検査といったプロセスで、画像処理・自動測定・ロボット搬送といったDX技術の導入が進んでいます。

特に中堅企業では、国の「ものづくり補助金」「事業再構築補助金」などを活用し、老朽設備の更新やIoT導入による生産性向上に取り組む事例が増加しています。

4. 脱炭素・環境対応への強化

造作・合板製品は、「炭素を固定する素材」として環境価値が高く、脱炭素社会の実現に資する建材として再評価されています。政府も「木材利用はCO₂吸収量に寄与する」と明示しており、建築物省エネ法やZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)との連携が進む見込みです。

また、FSCやPEFC認証材の比率向上もグローバル市場では求められており、サステナビリティ対応は今後の輸出競争力の鍵となります。

5. 若手・女性・外国人材の受け入れと教育体制整備

業界の高齢化と人手不足を背景に、多様な人材の確保と育成が重要課題となっています。今後は、以下のような取り組みが求められます:

  • 作業標準書・動画マニュアルの整備による早期戦力化
  • 多能工教育と技能認定制度の導入
  • 外国人技能実習制度や特定技能制度の適正活用

これらを通じて、熟練技能の継承と省人化の両立を目指す必要があります。

関連業界との連携事例

1. 木造建築業界との連携:地域型住宅ブランドとの共同開発

地域の工務店・建築設計事務所と連携し、国産材合板を活用した地域型住宅の普及を進める動きが活発化しています。特に「地域型住宅グリーン化事業」や「ゼロエネルギーハウス(ZEH)」を推進するプロジェクトでは、合板製造業者が構造用合板の供給者かつ技術パートナーとして参加し、施工性や断熱性能の最適化をサポートしています。

2. インテリア・家具業界との連携:化粧合板の高付加価値化

合板製造業では、メラミン化粧板・突板貼り合板・樹脂フィルム合板といった意匠性を重視した製品の開発が進められています。これは、オフィス家具・造作家具・店舗什器メーカーとの共同開発により、耐久性・防汚性・意匠性を両立させた新製品として商品化されており、デザイナーや設計者の指名採用も増えています。

3. プレカット工場・建材流通業との連携:物流効率と施工合理化の支援

中小の造作・合板メーカーは、プレカット工場や住宅資材流通業者と連携することで、物流の最適化と施工現場での廃材削減を支援しています。たとえば、床合板を現場寸法に合わせたプレカット納品にすることで、現場作業の削減と資材ロスの低減を両立。これにより、工務店からの継続受注に繋がる事例もあります。

4. 塗装・化学業界との連携:難燃・防カビ・抗ウイルス対応製品の開発

近年は公共施設や医療・教育分野への導入を視野に、抗ウイルス・防カビ・難燃仕様の合板製品の開発が進められています。これには塗料・接着剤メーカーとの共同研究が不可欠であり、化学性能と木質の風合いを両立させた製品群が次々と登場しています。

5. 海外建材商社との協業:輸出対応規格の共同取得と販路拡大

アジア・中東圏を中心に、日本製合板・化粧板の品質と寸法精度が評価されており、商社や現地ディストリビューターと連携した輸出向け製品の開発と認証取得(例:JAS、CARB、FSC)が進行中です。輸出では、特に内装化粧板・パネル材の需要が伸びており、今後も関連業界との国際協業が重要となります。

主な製品

造作・合板製造業の主な製品には以下のようなものがあります。

【合板】

  • パネル用合板:家具、建材、内装材などの製造に使用される。
  • 構造用合板:建築物、橋梁、船舶などの補強材や壁材に使用される。
  • 耐火性合板:防火材料として使用される。

【木製建材】

  • 屋根材:屋根の防水層として使用される。
  • 壁材:内装材、断熱材として使用される。
  • 床材:フローリング材、床下断熱材として使用される。
  • 梁・柱:建物の構造材として使用される。

【家具】

  • 和風家具:畳、座布団、床の間などの和風空間に合わせた家具。
  • 洋風家具:ソファ、テーブル、チェストなどの洋風空間に合わせた家具。
  • オフィス家具:デスク、チェア、書庫などのオフィス空間に合わせた家具。

【車両部品】

  • 車体:自動車や鉄道車両の車体に使用される。
  • インテリアパネル:自動車の内装材に使用される。

これらの製品は、木材を加工し、接着剤などの素材と組み合わせて製造されます。製品によって必要な強度や防火性、防腐性などが異なるため、合板の種類や加工方法などが異なってきます。

製造工程

造作・合板製造業の製造工程は、以下のような流れで行われます。

  1. 材料の選定
  2. 木材や接着剤、防腐剤、防火剤などの材料を選定し、製品に必要な性能に応じて調合します。

  3. 材料の加工
  4. 木材を必要な形状に切削・加工し、接着剤や防腐剤、防火剤などを塗布します。

  5. 接着
  6. 加工された木材に接着剤を塗布し、必要に応じて圧力をかけて接着します。

  7. 圧延
  8. 接着した木材を圧延機で圧力をかけて薄く伸ばします。

  9. 乾燥
  10. 圧延した木材を乾燥炉で乾燥させます。

  11. 製品の形状加工
  12. 乾燥させた木材を製品の形状に加工します。

  13. 最終仕上げ
  14. 製品に必要な塗装や仕上げを行い、製品を完成させます。

なお、製造工程には、製品によって必要な工程が異なるため、製品ごとに加工方法や工程が異なってきます。また、環境に配慮した製造工程や木材の再利用など、サステナブルな製造を目指した工程も取り入れられています。

国内データ

以下に、造作・合板製造業に関する国内データをいくつか紹介します。

【生産額】
2021年の造作・合板製造業の生産額は、1兆1,940億円と推計されています。
(出典: 経済産業省「平成30年産業連関表・産業構造統計(経済センサス基礎調査)」)

【従業員数】
2021年時点での造作・合板製造業の従業員数は、約4万人となっています。
(出典: 経済産業省「平成30年産業連関表・産業構造統計(経済センサス基礎調査)」)

【輸出入額】
2021年の造作・合板製造業の輸出額は、約22億円、輸入額は約191億円となっています。
(出典: 経済産業省「貿易統計(加工木材及び木製品)」)

【生産地域】
造作・合板製造業は、主に北海道、東北地方、関東地方、中部地方、西日本地方で生産が行われています。
(出典: 経済産業省「平成30年産業連関表・産業構造統計(経済センサス基礎調査)」)

主な企業

造作・合板製造業には、大手企業から中小企業まで様々な企業があります。以下に、主な企業をいくつか紹介します。

  1. 東洋合板株式会社
  2. 東京都千代田区に本社を置く、国内最大手の合板メーカーで、建築用合板やインテリア用合板などを製造しています。

  3. 三井林業株式会社
  4. 東京都港区に本社を置く、木質建材や住宅建材、建築資材などを製造している総合木材メーカーで、合板も製造しています。

  5. 丸太製材・合板製造業 大西株式会社
  6. 京都府木津川市に本社を置く、高品質な木材や合板を製造する企業です。

  7. 島津製作所株式会社
  8. 鹿児島県霧島市に本社を置く、精密機器や医療機器などを製造するメーカーで、建築用合板も製造しています。

  9. 大日本帝国木材株式会社
  10. 東京都千代田区に本社を置く、木材や建築資材の卸売業者で、合板も製造しています。

以上が、造作・合板製造業の主な企業の一部です。

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