石油精製業の概要
石油精製業とは、原油を原料として、ガソリン、軽油、重油、灯油、プロパン、プロピレン、ブタジエン、アスファルトなどの様々な石油製品を製造する産業のことを指します。
石油は、地下から採掘された後、石油精製プラントで複数の工程を経て、目的の製品に加工されます。石油精製業は、世界的に重要な産業の1つであり、エネルギー、運輸、化学工業、建設などの様々な分野で利用されています。
日本の石油精製業について
日本の石油精製業界は、石油需要が高く、国内ではほとんど採油ができないため、主に原油を輸入して精製を行っています。日本の石油精製業界は、主に国内大手の石油メジャー企業である、ENEOS、JXTGエネルギー、出光興産、コスモ石油、三菱化学などが中心となっています。
これらの企業は、精製施設を複数所有し、石油製品を供給しています。また、日本の石油精製業界は、環境規制の厳しさに対応し、燃費性能が高く環境に配慮された製品の開発や、再生可能エネルギーへの取り組みも進んでいます。
近年、エネルギー転換に伴い、石油精製業界でも再生可能エネルギーへの注目が高まっています。ENEOSやJXTGエネルギーは、風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーにも参入し、環境問題に取り組んでいます。
主な製品
石油精製業の主な製品には以下が含まれます。
【ガソリン】
自動車用燃料として広く使用される。
【軽油】
ディーゼルエンジン用燃料として使用される。
【重油】
船舶や発電所の燃料として使用される。
【灯油】
家庭用燃料として使用される。
【プロパン・ブタン】
LPG(液化石油ガス)として家庭用ガスコンロや暖房器具などに使用される。
【アスファルト】
道路や建築物の舗装材料として使用される。
【ケロシン】
航空機用燃料として使用される。
【ナフサ】
化学工業の原料として使用される。
【プロピレン】
プラスチックや合成繊維の原料として使用される。
【ブタジエン】
合成ゴムの原料として使用される。
これらの製品は、原油の種類や精製プロセスによって異なる特性を持ち、それぞれ様々な用途に使用されています。
製造工程
石油精製業の製造工程は、以下のようなプロセスで構成されます。
- 脱塩(デサルティング):原油に含まれる塩分を取り除くため、原油を高速回転するデサルティングデカンターに入れ、油と水との界面に現れる塩分を分離する。
- 蒸留(ディスティレーション)
- 改質(クラッキング)
- ハイドロデスルフュリゼーション
- 催化重合
- 精製・深度処理
- 製品の製造・出荷
原油を加熱して蒸気にし、異なる沸点を持つ成分に分離する。留分の軽いものがガソリン、軽油、灯油、留分の重いものが重油、アスファルトになる。
軽油を加熱し、分解してガソリンやプロパン、プロピレン、ブタジエンなどを製造する。
原油に含まれる硫黄分を取り除くため、水素を加えて硫黄を取り除く。
エチレンなどのオレフィン類を、触媒を用いて重合してプロピレン、ブタジエン、スチレンなどを製造する。
製品の純度を高めるため、脱硫、脱窒、脱色、脱臭などの処理を行う。
製品が完成したら、タンクに貯蔵し、需要に応じてタンクローリーやタンカーで出荷する。
これらの工程を経て、ガソリン、軽油、重油、灯油、プロパン、プロピレン、ブタジエン、アスファルトなどの様々な石油製品が製造されます。
国内データ
以下に、日本の石油精製業界に関する主要な統計データをいくつか挙げておきます。
- 精製原油量
- 精製製品量
- 精製所数
- 生産性
- 石油製品の需要
2020年度の精製原油量は、1億486万KLでした。
2020年度の精製製品量は、ガソリンが4,607万KL、軽油が6,479万KL、重油が2,267万KL、灯油が1,697万KL、LPGが2,253万トン、アスファルトが1,045万トンでした。
2020年現在、日本には16の石油精製所があります。
日本の石油精製所の生産性は高く、1人当たりの製品生産量は世界トップクラスです。
日本の石油製品需要は年々減少傾向にありますが、2020年度の需要はガソリンが2,308万KL、軽油が5,949万KL、重油が1,574万KL、灯油が1,330万KL、LPGが1,889万トンでした。
以上が、日本の石油精製業界に関する主要なデータになります。
主な企業
日本の石油精製業界には、以下のような主要な企業があります。
- 三菱化学エンジニアリング株式会社
- 昭和シェル石油株式会社
- 出光興産株式会社
- 住友化学株式会社
- コスモ石油株式会社
- 日本製油株式会社
- 積水化学工業株式会社
- 三井化学株式会社
- 旭化成株式会社
- 日本エネルギー株式会社
これらの企業は、日本の石油精製業界の中で大きなシェアを占めています。それぞれの企業は、製品の品質や開発、生産工程の改善などに注力しており、高品質な製品の供給や、環境負荷の低減などを目指しています。