水産食料品製造業の概要
魚介類や海藻、貝類などの水産生物を原料として、食品加工や調理を行って食品を製造する産業のことを指します。例えば、魚の缶詰、乾物、冷凍食品、魚肉ソーセージ、魚肉練り製品、海苔、わかめなどが水産食料品の代表的な製品です。
水産食料品製造業は、水産物の水分やタンパク質、脂質、ミネラル、ビタミンなどが豊富に含まれており、健康に良いとされることから、世界中で需要が高まっています。また、日本をはじめとする沿岸国では、古くから海洋資源を活用した食文化が根付いており、多様な水産食料品が開発されています。
歴史
水産食料品製造の歴史は、人類が海や川から魚や貝類を捕獲し始めた時点から始まります。以下にその歴史のいくつかの重要なポイントを時系列順に示します。
- 古代
- 中世
- 近代
- 20世紀
- 21世紀
人類が定住生活を始めた新石器時代には、すでに魚や貝類の捕獲が行われていました。また、紀元前2000年頃の古代エジプトでは、ナイル川で魚の養殖が行われていたとの記録が残っています。
中世ヨーロッパでは、キリスト教の影響で断食日に肉食が禁じられ、その代替として魚の消費が広まりました。また、塩漬けや燻製といった保存方法も発達しました。
18世紀の産業革命により、漁業技術や魚の保存技術(缶詰など)が発展しました。鉄道や船舶による輸送の発達により、魚介類の流通範囲も広がりました。
冷凍技術や冷蔵運搬の発達により、新鮮な魚介類の流通が可能になりました。また、水産養殖業が進展し、特に日本や東南アジアではエビやサケの養殖が盛んになりました。
近年では、海洋汚染や過剰な漁獲による資源の枯渇問題が深刻化しています。これに対応するため、サステナブルな漁業や魚の代替品(プラントベースの魚や培養魚)の開発が進んでいます。
これらの歴史的な出来事により、現代の水産食料品製造業が形成されました。今後も、環境に配慮した漁業や新たな食品技術の開発が進むと考えられます。
日本の水産食料品製造業について
日本は周囲を海に囲まれた国であるため、豊富な海洋資源を活用した水産食料品製造業が盛んです。以下に日本の水産食料品製造業に関する特徴をいくつか紹介します。
【地域特性による製品開発】
日本の各地域には、伝統的な水産食品が多くあり、地域によって特色のある製品が作られています。例えば、北海道では鮭の塩辛やイクラ、千葉県では鯖の味噌漬け、愛媛県ではしらす干し、鹿児島県ではかつお節などが代表的な地域特産品です。
【高い技術力による製品開発】
日本の水産食料品製造業は、高い技術力を持ち、安全で高品質な製品を作り出すことができます。例えば、鮮度を保つための冷凍技術や真空包装技術、微生物の繁殖を抑えるための高圧殺菌技術などが活用されています。
【外食産業との連携】
日本の水産食料品製造業は、外食産業との連携も盛んです。海鮮丼や寿司、天ぷらなどは、外食産業で人気の高いメニューの一つであり、水産食料品製造業の技術力や品質管理能力が評価されています。
【海外市場での需要拡大】
日本の水産食料品製造業は、高品質で安全な製品が評価され、海外市場でも需要が拡大しています。特に、日本の鮮魚や鮮魚加工品は、世界中で高い評価を受けています。
また、日本は古くから海洋国家であり、豊かな海洋資源を活用した水産食料品製造の歴史があります。以下にその主な歴史を時系列順に説明します。
- 古代
- 奈良・平安時代
- 江戸時代
- 明治時代
- 昭和時代
- 平成・令和時代
縄文時代から魚や貝類の捕獲が行われていました。特に貝塚文化は、古代人が魚介類を主食としていたことを示しています。
この時代から、魚醤や魚醤油などの製造が始まりました。また、ニシンや鮭の塩蔵も行われていました。
江戸時代には、魚介類の消費が広く普及しました。鮨や天ぷらなど、魚介類を使用した食文化が発展しました。
近代的な漁業や魚類加工業が本格的に始まりました。また、缶詰などの新しい保存方法が普及しました。
第二次世界大戦後、急速な経済成長と共に、魚介類の消費が増加しました。また、冷蔵・冷凍技術の発展により、新鮮な魚介類の流通が広がりました。
近年では、漁獲量の減少や海洋汚染などの問題が深刻化しています。これに対応するため、魚介類の持続可能な利用や、水産養殖の技術開発が進んでいます。
主な製品
水産食料品製造業の主な製品には、以下のようなものがあります。
【缶詰】
鮭やマグロ、さば、イワシなどの魚介類を缶詰にした製品があります。缶詰にすることで、保存期間が延び、賞味期限が長くなります。
【冷凍食品】
海老やイカ、アジ、サケ、タコなどの魚介類を冷凍した製品があります。調理前に解凍して調理することで、鮮度を保ちながら食べることができます。
【鮮魚加工品】
鮮魚を加工した製品があります。代表的なものには、魚肉ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、魚肉練り製品などがあります。
【干物】
イワシ、サバ、アジ、カレイなどの魚介類を干して作った製品があります。保存期間が長く、食べ応えがあるため、おつまみやおかずによく使われます。
【海藻類】
海苔、わかめ、昆布、アオサなどの海藻類を加工した製品があります。海苔は、おにぎりや寿司の具材として、わかめや昆布は、味噌汁や和え物の具材としてよく使われます。
【貝類】
牡蠣、アサリ、ホタテ、ムール貝などの貝類を加工した製品があります。貝の缶詰や冷凍貝などがあります。
これらの製品は、食品加工技術や保存技術が発展しているため、高品質で安全なものが多くあります。また、健康にも良いとされるため、世界中で需要が高まっています。
製造工程
水産食料品の製造工程は、製品の種類によって異なりますが、一般的には以下のような工程があります。
- 原材料の仕入れと品質確認
- 洗浄と選別
- 加工
- 調理
- 検査とパッケージング
水産食料品の製造には、新鮮で安全な魚介類や海藻類が必要です。原材料は、漁港や卸売市場から仕入れられます。製造前には、原材料の品質を確認し、不良品を除外します。
原材料は、まず洗浄されます。魚介類の場合は、内臓や骨、皮などを取り除きます。選別は、大きさや形状、品質などによって分類する作業です。
原材料を加工し、製品に仕上げます。鮮魚の場合は、魚肉を練ってソーセージやかまぼこにするなど、形状を変えます。海藻類は、刻んで和え物や汁物の具材にすることが多いです。また、味付けや調理方法によって、製品の味や風味が決まります。
製品によっては、調理する必要があります。例えば、缶詰や瓶詰めの製品は、加熱殺菌することで保存期間を延ばします。冷凍食品は、凍結することで鮮度を保ちます。
製品には、品質検査が行われます。製品の味や香り、外観などを確認し、安全性が確保されていることを確認します。最後に、製品をパッケージングして出荷します。
以上が、一般的な水産食料品の製造工程です。製品によっては、工程が異なる場合もあります。
国内データ
以下は、日本の水産食料品製造業に関する国内データです。
- 2020年の水産加工品の生産額は、1兆1,020億円でした。
- 2020年の水産加工品の出荷額は、1兆1,362億円でした。
- 2020年の水産加工品の輸出額は、1,056億円でした。
- 2020年の水産加工品の主な輸出先は、アメリカ、中国、韓国、台湾、香港、タイなどです。
- 2020年の水産加工品の主な製品は、かつお節、昆布、鰹のたたき、干物、ちりめんじゃこ、ちくわ、かまぼこ、いかの塩辛、いくらなどです。
なお、上記のデータは、経済産業省の「水産業動態統計調査」に基づいています。
主な企業
日本の水産食料品製造業には多くの企業がありますが、以下に代表的な企業をいくつか挙げます。
- 日本水産株式会社
- 明治屋株式会社
- 美登利株式会社
- 鈴木養魚場株式会社
- ニチレイ株式会社
- マルハニチロ株式会社
- 王子ホールディングス株式会社
- ホウズキ株式会社
- いかだんご株式会社
- チャーハン工房株式会社
これらの企業は、鮮魚や鮮魚加工品、水産缶詰、乾物、冷凍食品などの水産食料品を製造・販売しています。ただし、このリストはあくまで一例であり、他にも多くの企業があります。