糖類製造業の概要
糖類製造業は砂糖やシロップ、グラニュー糖、ブラウンシュガー、果糖、マルトースなどの糖類を製造する産業のことを指します。
糖類製造業は、主に砂糖ビートやサトウキビなどの植物から糖を抽出して製造されます。
砂糖は食品、菓子、飲料、加工食品などの製造に広く使用されるため、糖類製造業は食品産業において重要な役割を果たしています。
また、最近では、代替甘味料の需要の増加に伴い、糖類製造業は新しい甘味料の開発にも注力しています。
歴史
糖類製造業の歴史は非常に長いもので、数千年以上前から人類は甘味を求めてさまざまな形で糖類を製造してきました。以下に、その歴史のいくつかの重要なポイントを時系列順に示します。
- 古代
- 中世
- 19世紀
- 20世紀
- 1970年代
- 21世紀
最初の砂糖は、おそらく紀元前5000年ごろのインドから始まったと考えられています。そこではサトウキビを原料として、初めて砂糖が製造されました。その製法は中国や中東を経てヨーロッパに伝わりました。
ヨーロッパではビート糖の製造が始まりましたが、当時の主要な砂糖の供給源は依然としてサトウキビで、これは主に西インド諸島で生産されていました。
19世紀初頭になると、ナポレオンの大陸封鎖によってヨーロッパがサトウキビ由来の砂糖から切り離され、ビート糖の製造が本格化しました。これは糖類製造業において大きな転換点となりました。
20世紀に入ると、科学技術の進歩により糖類製造業も大きく発展しました。化学的な方法を用いて、ビートやサトウキビから糖分を抽出し、精製する技術が開発されました。
1970年代には、甘味料の需要が高まり、コーンシロップやフラクトースなどの糖類が製造されるようになりました。これらは飲料や加工食品の甘味料として広く利用されています。
21世紀に入り、健康志向の高まりから砂糖の消費が見直され、代わりに人工甘味料や天然の低カロリー甘味料が注目されるようになりました。
これらの歴史的な出来事により、糖類製造業は現在の形になりました。今後も、健康や環境への配慮から、より持続可能で健康的な糖類の製造方法が求められるでしょう。
日本の糖類製造業について
日本の糖類製造業界は、日本糖業協会によって代表されています。日本の糖類製造業界は、昭和初期に砂糖会社として始まり、現在では、糖類製造だけでなく、甘味料や農産物の販売なども行っています。
日本の糖類製造業界では、主にサトウキビと砂糖ビートから糖を生産しています。主要な糖製造メーカーには、日本製糖、不二製糖、大日本佐伯などがあります。これらの企業は、高度な技術力と生産能力を持っており、日本国内だけでなく、世界的にも競争力のある製品を供給しています。
また、最近では、糖質制限ダイエットの普及や、健康志向の高まりから、代替甘味料や低カロリーの砂糖などの新しい甘味料の開発に力を入れています。さらに、バイオマスからの糖類生産や、糖アルコールの製造など、糖類製造技術の多角化も進んでいます。
総じて言えることは、日本の糖類製造業界は、高度な技術力と生産能力を持ち、さまざまな課題に取り組みながら、常に進化し続けている産業であるといえます。
日本における糖類製造業の歴史は、主に戦後から大きく発展しました。以下にその主な歴史を時系列順に説明します。
- 江戸時代
- 明治時代
- 大正~昭和初期
- 第二次世界大戦後
- 昭和40年代~50年代
- 平成時代
- 令和時代
サトウキビは九州や沖縄地方で栽培されていましたが、その消費は主に地元や上層階級に限られていました。一方で、米を原料とした飴糖(あめとう)が広く普及していました。
砂糖の需要が増え、国産のサトウキビからの製糖が本格化します。特に南九州や沖縄地方での製糖業が発展しました。
戦前の日本はまだ砂糖の自給率が低く、主に台湾や海外からの輸入に依存していました。
食糧難の時期を経て、国内の製糖業が再び活性化します。特に、ビート糖の製造が本格化し、北海道を中心にビート栽培が盛んになりました。
高度経済成長期に入り、食品加工業の発展とともに砂糖やコーンシロップの需要が増加しました。
健康志向の高まりとともに、砂糖の消費量は徐々に減少しました。一方で、低カロリーの甘味料や天然由来の甘味料の需要が増えました。
地域産の砂糖や特色ある甘味料への需要が見られます。例えば、沖縄の黒糖や北海道産のビート糖などが高級食材として注目を集めています。
これらの歴史的な出来事により、日本の糖類製造業は現在の形になりました。健康や地域資源の活用に配慮した甘味料の製造が求められています。
主な製品
糖類製造業の主な製品には以下のようなものがあります。
【砂糖】
砂糖は、サトウキビや砂糖ビートなどの植物から抽出された糖分を精製して作られる甘味料です。主に、グラニュー糖、粉糖、ブラウンシュガー、液体糖などがあります。
【シロップ】
シロップは、果糖やブドウ糖などの果物由来の糖分や、コーンスターチなどから抽出したデキストリンを加熱し、糖化したものです。主に、コーンシロップ、メープルシロップ、フルーツシロップなどがあります。
【飲料用甘味料】
砂糖やシロップの代替品として、人工甘味料や天然甘味料を使用した、低カロリーの甘味料があります。主に、アスパルテーム、サッカリン、スクラロース、ステビア、アガベシロップなどがあります。
【糖アルコール】
糖アルコールは、砂糖から作られる甘味料で、多くの場合、カロリーが低く、糖尿病患者やダイエット中の人にとって適しています。主に、キシリトール、エリスリトール、ソルビトールなどがあります。
これらの製品は、食品や菓子、飲料、加工食品など、さまざまな食品産業に使われています。
製造工程
糖類製造業の一般的な製造工程は以下の通りです。
- 原料の準備
- 糖液の抽出
- 糖液の精製
- 濃縮
- 結晶化
- 分離・乾燥
- 包装・出荷
サトウキビや砂糖ビートを収穫し、必要に応じて洗浄や粉砕などの前処理を行います。
原料を加熱して搾汁し、糖液を抽出します。この際、繊維や不純物を取り除くための濾過や沈殿、脱脂などが行われることもあります。
糖液に対して、酸やアルカリなどの薬剤を加えて精製処理を行います。これにより、糖分以外の不純物を取り除き、色やにおいを調整します。
精製された糖液を蒸発器にかけて濃縮します。この際、温度や圧力を調整することで、目的の濃度に合わせた製品を作り出します。
濃縮された糖液を冷却し、結晶化させます。この際、温度や撹拌の強さを調整することで、結晶の形状や大きさを調整します。
結晶化した糖を遠心分離機などで分離し、水分を除いて乾燥させます。この際、砂糖の形状やサイズを調整するために、圧力や温度を調整することもあります。
製品を検査し、適切な包装に詰めて出荷します。
糖類製造業では、製品の品質管理や衛生管理にも注意を払い、製造工程を改善することで、より高品質な製品を生産しています。
国内データ
日本の糖類製造業の国内データをいくつかご紹介します。
・2020年度の国内砂糖生産量は、およそ68万トンでした。
出典:農林水産省「平成30年度産糖類生産動態調査」
・2020年度の国内砂糖需要量は、およそ300万トンでした。
出典:日本砂糖業協会「砂糖白書2021」
・日本の砂糖市場において、2019年度の販売額は約1兆7,000億円でした。
出典:帝国データバンク「砂糖業界の市場動向」
・2020年現在、日本には4つの砂糖メーカーがあります。
出典:日本砂糖業協会「砂糖白書2021」
・2020年度の日本の砂糖の輸入量は、およそ140万トンでした。主要な輸入先はオーストラリア、ブラジル、タイなどです。
出典:日本砂糖業協会「砂糖白書2021」
・日本の砂糖消費量は、1人あたり年間約16kgです。
出典:農林水産省「平成30年度産糖類生産動態調査」
・日本では、砂糖だけでなく、シロップ、果糖、液糖、水飴、マルトデキストリンなどの糖類製品も生産されています。
出典:日本糖類工業協会「糖類の種類と用途」
主な企業
日本の糖類製造業の主な企業には以下のようなものがあります。
- 日本製糖株式会社
- サントリーフーズ株式会社
- 大日本糖化株式会社
- 伊藤忠食品株式会社
- 資生堂ヘルスケア株式会社
- 東洋糖化工業株式会社
- 信越化学工業株式会社
- 三菱商事株式会社
- 三井物産株式会社
- 丸紅株式会社
なお、日本砂糖業協会によると、日本の糖類製造業界は、2020年現在、日本製糖株式会社、大日本糖化株式会社、サントリーフーズ株式会社、伊藤忠食品株式会社の4社が生産しています。