プラチナとは?定義と製造業での位置づけ
プラチナ(Pt、原子番号78)は、白金族金属(PGM)の代表的な貴金属で、耐食性、耐熱性、触媒特性の高さを武器に、製造業の重要部材として使われます。宝飾のイメージが強い一方、実務では自動車触媒、化学プロセス触媒、ガラス溶解用部材、電子部品、医療用途など「高信頼・高温・高腐食」領域で採用される材料です。
調達や設計では、プラチナ単体だけでなく、Pt合金、担持触媒、化合物(塩)、めっき用途など、用途に応じた形態を選ぶことがポイントになります。
原材料の種類:どこから回収・精製されるか
プラチナは、単独で産出されるよりも、白金族金属を含む鉱石や、ニッケル・銅鉱石に伴う副産物として回収されるのが一般的です。一次資源(鉱山由来)に加えて、使用済み触媒などからの二次資源(リサイクル由来)も供給源として重要です。
生産方法や工程:採鉱から高純度地金まで
プラチナは、鉱石の品位が低いことが多く、選鉱・濃縮から精製まで多段工程になります。プロセスの細部は企業や鉱床で異なりますが、代表的な流れは次のとおりです。
- 採鉱・選鉱:鉱石を破砕し、PGMを含む精鉱を得る
- 製錬:溶融・分離でPGMを濃縮し、基礎金属を除去する
- 湿式精製:溶解・分離(溶媒抽出、沈殿、イオン交換など)でPtを分離
- 還元・製品化:スポンジ、インゴット、粉末、化合物、触媒用前駆体などの形で出荷
製造業での実務は「どの形態で買うか」が重要です。例えば、触媒メーカーは塩や担持触媒、加工メーカーは地金・板・線材、めっき用途は専用薬液など、入り口が異なります。
特徴:プラチナが選ばれる理由
- 耐食性が高い:酸化や腐食に強く、薬品・高温雰囲気でも安定しやすい
- 高融点で耐熱性が高い:高温工程の部材や触媒用途で有利
- 触媒特性が高い:酸化・還元反応を促進し、排ガス浄化や化学プロセスで活躍
- 延性があり加工できる:用途により板、線、箔、メッシュなどの形状に展開可能
- 希少性が高く価格変動が大きい:供給集中と需要変動の影響を受けやすい
用途:製造業での主要な使い道
自動車分野:排ガス浄化触媒
プラチナは自動車排ガス浄化触媒で重要な役割を担います。用途や車種、規制要件によっては、パラジウムやロジウムとの組み合わせ、置換が行われます。
化学・石油化学:プロセス触媒
化学合成や精製工程で、反応効率や選択性、寿命が求められる触媒として採用されます。設計では活性だけでなく、毒化耐性、再生性、回収性が重要です。
電子・電気:部品材料、めっき、接点
耐食性や高温安定性を狙い、部品材料やめっき用途で使われます。電気抵抗や摩耗、相手材との相性など、用途条件に合わせた評価が必要です。
ガラス・高温設備:溶融用部材
高温で腐食性の高い溶融ガラスを扱う工程で、ルツボや治具などの部材にPt合金が採用されることがあります。純Ptではなく合金で特性を調整するケースが多いのが特徴です。
医療:インプラント、電極、機器部材
生体適合性と耐食性を評価され、医療用途で使われることがあります。医療向けは規格・トレーサビリティ・表面状態管理が特に重要です。
費用や価格の動向:変動要因の分解が重要
プラチナは高価で、価格変動も起きやすい金属です。原価見積りでは「地金価格」だけでなく、次の要因を分けて管理するとブレが小さくなります。
- 地金相場:世界需給、投機、為替の影響
- 供給リスク:産地集中、操業・電力・物流の影響
- 用途の変化:自動車触媒の構成変化、代替・搭載量の変更
- リサイクル流量:使用済み触媒やスクラップ回収量
- 加工費:溶解、加工、検査、歩留まり(高価材ほど影響が大きい)
生産量や需要の推移:一次供給と二次供給で見る
プラチナは供給が限られやすく、一次供給(鉱山)と二次供給(リサイクル)の両輪で市場が成り立ちます。製造業では、需要見通しよりも「リードタイム」「規格適合サプライヤーの数」「回収スキームの有無」が調達安定性を左右します。
国内外の主要生産地・輸入の考え方
主要生産地は南部アフリカ地域、ロシアなどに集中する傾向があります。日本は原料・地金を輸入に依存するため、購買ではサプライヤー分散、在庫戦略、代替設計、リサイクル前提の材料設計が重要になります。
環境負荷やリサイクル:回収が前提の貴金属
鉱山由来のプラチナは採掘・精製でエネルギー負荷が大きくなりやすい一方、リサイクルは資源効率の面で重要です。自動車触媒、化学触媒、電子スクラップ、加工屑などから回収され、回収率と採算性は分別・分析・検収体制で大きく変わります。
- 回収源:使用済み自動車触媒、使用済み化学触媒、めっき廃液、電子スクラップ、加工屑
- 実務ポイント:混合汚染の抑制、回収しやすい設計、ロット管理、分析と精算条件の明確化
製品の品質管理や品質基準:用途別に押さえる項目
プラチナは用途により必要な品質が大きく変わります。購買仕様書では、純度だけでなく「形態」と「用途要求」をセットで定義するのが効果的です。
| 用途 | 重視されやすい品質項目 | 不具合例 |
|---|---|---|
| 触媒(担持触媒・前駆体) | 純度、塩種、担持量、粒度、毒化成分、ロット安定性 | 活性不足、寿命短縮、性能ばらつき |
| 地金・合金(板・線・箔) | 純度、合金組成、機械特性、寸法、公差、表面状態、証明書 | 割れ、変形、加工不良、溶接不良 |
| めっき・電極 | 膜厚、密着性、電気特性、耐食性、表面粗さ | はく離、接触抵抗増、腐食、外観不良 |
設計や加工方法における制約・注意点
- 高価材のため、必要機能を満たす最小使用量(膜厚、担持量、部位限定)で最適化する
- 高温用途は、純Ptではなく合金化で耐クリープ性や耐変形性を調整することがある
- 接合・溶接・ろう付けは材料状態と形状で難易度が変わるため、試作で条件出しを行う
- 調達は供給集中の影響を受けやすいので、代替候補(他PGMや設計変更)と回収を同時に検討する
よくある質問(Q&A)
Q1. プラチナは何に使われる金属ですか?
A1. 製造業では自動車触媒、化学プロセス触媒、電子部品、ガラス溶融用部材、医療用途などで使われます。宝飾以外の工業用途が大きな比率を占めることが特徴です。
Q2. プラチナはどこから採れますか?
A2. 白金族金属を含む鉱石や、ニッケル・銅鉱石に伴う副産物として回収されます。一次資源に加え、使用済み触媒などからのリサイクルも重要な供給源です。
Q3. なぜプラチナは高価で、価格が変動しやすいのですか?
A3. 希少性と供給集中に加え、自動車触媒など特定用途の需要変動、為替、投機、リサイクル流量の変化が価格に反映されやすいためです。
Q4. パラジウムやロジウムとの違いは何ですか?
A4. いずれも白金族金属ですが、用途や触媒特性、供給構造が異なります。触媒では組み合わせや置換が行われるため、性能・コスト・調達リスクを同時に評価するのが実務的です。
Q5. リサイクルはどこから回収されますか?
A5. 使用済み自動車触媒、化学触媒、電子スクラップ、めっき廃液、加工屑などから回収されます。分別と分析、精算条件の設計が回収率と採算を左右します。
Q6. 設計でコストを抑える方法はありますか?
A6. 部位限定での使用、担持量や膜厚の最適化、代替材の検討、回収しやすい構造設計の組み合わせが有効です。材料費だけでなく加工費と歩留まりも含めて最適化します。

