モヘアとは
モヘア(Mohair)は、アンゴラヤギ(Angora goat)の毛から作られる天然繊維です。光沢感のある見た目、軽さ、空気を含む保温性、そして独特のハリと弾力が特徴で、秋冬の衣料から高級インテリア素材まで幅広く使われます。
なお、モヘアは「アンゴラウサギの毛」と混同されがちですが、アンゴラウサギ由来は一般に「アンゴラ」と呼ばれ、原料動物が異なります。モヘアはアンゴラヤギ由来の繊維です。
モヘアが注目される理由
- 上品な光沢が出やすく、発色もきれいに見える
- 繊維が空気を含みやすく、軽いのに暖かい
- 弾力があり、型崩れしにくい設計がしやすい
- 他繊維との混紡で、風合い・強度・コストを調整しやすい
- 衣料だけでなく、起毛素材・フェイクファー調・椅子張りなど用途が多い
原材料と「アンゴラ」との違い
モヘアの原材料
モヘアの原料はアンゴラヤギの毛です。ヤギの年齢や部位、繊維の太さ(マイクロン)によって品質が変わり、若いヤギ由来の細い繊維ほど柔らかく高級とされます。
アンゴラ(ウサギ毛)との違い
| 項目 | モヘア | アンゴラ |
|---|---|---|
| 原料動物 | アンゴラヤギ | アンゴラウサギ |
| 風合い | 光沢、ハリ、弾力が出やすい | とても柔らかいが毛羽が出やすい |
| 用途 | ニット、コート、起毛生地、インテリア | ニット、混紡素材、軽量保温系 |
| 取り扱い | 毛羽・フェルト化に注意しつつ比較的扱いやすい | 抜け毛や毛羽立ちに注意が必要 |
生産方法と工程
一般的なモヘア製品は、次の工程で作られます。製品目的(ニット、織物、起毛生地など)によって工程が一部変わります。
- 毛刈り:アンゴラヤギから繊維を採取
- 選別:繊維の太さ・長さ・色・夾雑物の有無でグレード分け
- 洗浄:油分や汚れを落として清潔な原料にする
- 梳毛・紡績:繊維を整え、糸にする(混紡の場合はこの段階でブレンド)
- 編立・製織:ニットや織物へ加工
- 仕上げ:起毛、縮絨、セット、ブラッシングなどで風合いを調整
モヘアの主な特徴
1. 光沢と発色
モヘアは繊維表面の反射特性により、自然な光沢が出やすいのが魅力です。染色後も色が沈みにくく、鮮やかで深みのある表情を作りやすい素材です。
2. 軽さと保温性
繊維が空気を含みやすく、軽量でも暖かさを確保しやすい傾向があります。ふくらみ感のあるニットや起毛生地で、とくに体感しやすい特性です。
3. 弾力と形状保持
適度なハリと弾力があるため、シルエットをきれいに見せたい衣料に向きます。ニットでもだれにくい設計がしやすく、コートやジャケット、セットアップ素材にも採用されます。
4. 注意点(毛羽・チクチク感・フェルト化)
- 繊維が太めのグレードは、肌に触れたときの刺激を感じやすい場合があります
- 摩擦が多い部位は毛羽立ちやピリングが起きることがあります
- 高温・強い攪拌・急な温度差はフェルト化や縮みの原因になり得ます
種類・グレードの見方
モヘアは「繊維の太さ」「繊維長」「混紡率」「仕上げ」によって性格が大きく変わります。選定時は用途に合わせて次の観点を確認すると失敗が減ります。
- 繊維の太さ(マイクロン):細いほど柔らかく、肌当たりが良い傾向
- 繊維長:長いほど紡績しやすく、毛抜けや毛羽を抑えやすい傾向
- 混紡率:ウール、ナイロン、ポリエステルなどと組み合わせて性能を調整
- 仕上げ:起毛の深さ、毛足の長さ、ブラッシングで表情が変わる
主な用途
衣料用途
- ニット:セーター、カーディガン、ストール、マフラー
- アウター:コート、ジャケット、起毛素材の表地
- 小物:帽子、手袋、ソックス(混紡で耐久性を補う設計が多い)
インテリア・資材用途
- 椅子張り・ソファ生地:耐久性や風合いを活かした高級ファブリック
- ラグ・ブランケット:毛足感と保温性を活かした用途
- 舞台衣装・装飾:光沢とボリューム感を演出しやすい
価格の決まり方と相場感の考え方
モヘアは高級素材として扱われることが多く、価格は主に原料グレードと供給量、混紡率、仕上げ工程の手間で変動します。とくに繊維が細く長い高グレードは希少になりやすく、単価が上がる傾向があります。
- 高価になりやすい要因:細番手向け原料、高混率、起毛や仕上げ工程が多い
- コスト最適化の例:ウールや合繊との混紡で耐久性と価格のバランスを取る
主要生産地と流通の特徴
モヘアの主な生産は、アンゴラヤギの飼育が盛んな地域を中心に行われます。原料としてのモヘアは国際取引され、紡績・織編・仕上げは複数国で分業されることも一般的です。
- 主な生産地域:南アフリカ、トルコ、米国(テキサスなど)ほか
- 加工・流通の例:原料産地 → 紡績・織編の産地 → アパレル・インテリア向け供給
環境負荷・動物福祉とサステナビリティ
モヘアは天然由来の繊維で、生分解性が期待できる素材です。一方で、家畜由来素材のため、飼育環境や毛刈り工程における動物福祉への配慮が重要になります。近年は、トレーサビリティや第三者認証を重視した調達が広がっています。
- 確認しやすい観点:飼育・毛刈りの管理体制、サプライチェーンの透明性、認証の有無
- リサイクル:単一素材より混紡品の方が分別・再資源化が難しくなる傾向がある
- 長く使う工夫:適切なケアで寿命を延ばし、買い替え頻度を下げるのが実務的な環境対策になる
品質管理のポイント
モヘア製品の品質は、原料の選別だけでなく、紡績・仕上げ・縫製設計で大きく変わります。とくに毛羽、毛抜け、ピリング、縮みは品質クレームにつながりやすいため、工程設計と試験で事前に潰すことが重要です。
- 原料管理:繊維の太さ・長さ、夾雑物、ロットばらつき
- 糸設計:撚り、番手、混紡率、強度
- 生地設計:密度、組織、起毛条件、毛足の長さ
- 評価項目:ピリング、摩擦、寸法変化、色落ち、毛抜け
取り扱い・お手入れの注意点
- 洗濯表示に従う(ドライ推奨の製品は無理に水洗いしない)
- 毛並みを整える:軽いブラッシングで毛玉・絡みを抑えやすい
- 摩擦を避ける:バッグのストラップや肘など擦れやすい部位は毛羽立ちやすい
- 保管:湿気を避け、通気性のある状態で防虫対策を行う
まとめ
モヘアはアンゴラヤギ由来の天然繊維で、光沢、軽さ、保温性、弾力のバランスに優れた高級素材です。衣料からインテリアまで用途が広く、混紡や仕上げ設計で風合いと耐久性を調整できるのも強みです。
一方で毛羽立ちや縮みなどの注意点もあるため、用途に合ったグレード選定と品質設計、適切なお手入れが重要になります。素材特性を理解して選べば、長く楽しめる魅力の大きい天然繊維です。
よくある質問(Q&A)
Q1. モヘアの原料はアンゴラウサギですか?
いいえ。モヘアはアンゴラヤギの毛から作られる天然繊維です。アンゴラウサギ由来は一般にアンゴラと呼ばれ、別の素材として扱われます。
Q2. モヘアはチクチクしますか?
繊維の太さや混紡率、仕上げによって体感が変わります。細いグレードや適切な混紡・仕上げの製品は肌当たりが改善しやすい一方、太めの繊維は刺激を感じる場合があります。
Q3. 毛玉や毛羽立ちが出やすいのはなぜですか?
起毛感のある素材特性と摩擦が重なると、毛羽やピリングが起きやすくなります。生地密度、糸撚り、混紡設計、着用環境で差が出ます。
Q4. 家で洗えますか?
製品の洗濯表示に従ってください。ドライクリーニング推奨の場合は、水洗いで縮みや風合い変化が起きる可能性があります。洗える仕様でも、弱水流・低温・短時間、平干しが基本です。
Q5. サステナブルに選ぶポイントはありますか?
調達の透明性や認証の有無、トレーサビリティ、飼育・毛刈りの管理方針が確認できる製品を選ぶのが一つの方法です。加えて、適切にケアして長く使うことが環境負荷の低減につながります。

