動植物油脂製造業の概要
動植物油脂製造業とは、動物性および植物性の油脂を抽出・精製し、加工して、食品、化粧品、工業製品などの原料として提供する産業のことです。
具体的には、大豆、菜種、コーン、オリーブ、パーム、ココナッツ、豚や牛などの脂肪組織から植物性油脂や動物性油脂を製造します。製造プロセスには、圧搾、溶剤抽出、脱臭、精製などの工程が含まれます。
この産業は、食品業界や化粧品業界、工業製品業界などの広い範囲で使用される原料を提供しています。動植物油脂は、食品の調理や製菓業界で使用されるだけでなく、洗剤や石鹸の製造、医薬品の製造、バイオ燃料の製造など、多様な産業で使用されます。
歴史
動植物油脂製造業は、食用油や工業用油、化粧品など、多くの製品に必要な原料を提供する重要な産業です。その歴史は古代にまで遡ります。以下にその主な歴史を時系列順に説明します。
- 古代
- 中世
- 18-19世紀
- 20世紀
- 21世紀
人類は古代から植物や動物から油脂を抽出して使用してきました。橄欖油は古代地中海地域で、またシャガ(ネズミイモ)やフラクシーノキからの亜麻仁油は古代エジプトで広く使われていました。
中世ヨーロッパでは、動物脂肪から得られるタロウが主に燃料や石鹸製造に使用されました。また、植物油は料理や照明、薬用に使われました。
工業革命に伴い、大規模な油脂製造が可能になりました。また、化学工業の発展により、油脂の化学的な性質が解明され、より効率的な抽出方法や多様な用途が開発されました。
20世紀に入ると、石油化学産業の発展とともに合成油脂の製造も始まりました。また、食用油の製造技術の進歩により、植物油が主流の食用油となりました。
健康意識の高まりや環境保護の意識から、有機的または持続可能な方法で抽出された油脂や、特定の栄養素を豊富に含む油脂(例:オメガ-3脂肪酸を多く含む魚油)の需要が増えています。
このような歴史的な出来事により、現代の動植物油脂製造業が形成されました。今後も、健康や環境への配慮、新たな技術開発が進むと考えられます。
日本の動植物油脂製造業について
日本の動植物油脂製造業界は、食品や化粧品、工業製品などの原料として重要な役割を果たしています。
主な製造業者は、ITOCHU食品・化工、マルハニチロ、昭和シェル石油、味の素、エフ・シー・シー、コスモ石油などがあります。これらの企業は、植物性油脂や動物性油脂を製造するだけでなく、添加剤やエモリエントなどの機能性原料も提供しています。
日本の動植物油脂製造業界は、主に大豆油、菜種油、パーム油、コーン油、オリーブ油などの植物性油脂を製造しています。動物性油脂は、主に豚脂や牛脂などが使用されます。
また、日本では健康志向の高まりに伴い、低カロリーの植物性油脂や、オメガ3脂肪酸などの機能性を持つ油脂の需要も増加しています。
日本の動植物油脂製造業界は、高品質な製品を提供することで、国内外の市場で競争力を持っています。さらに、環境保護に配慮した製造技術の開発や、循環型社会に向けた取り組みも進められています。
古代から現代まで、日本独自の歴史を歩んできた、その主な歴史を時系列順に説明します。
- 古代から中世
- 江戸時代
- 明治時代
- 昭和時代
- 平成・令和時代
日本では古代から中世にかけて、植物や動物から油を抽出し、照明や調理、美容に利用してきました。特に魚油や菜種油が重要な油脂源でした。
この時代には、大量の鯨油が抽出され、照明油として広く使用されました。
西洋文化の導入により、洋式の油脂製造技術が導入され、大規模な油脂製造が始まりました。また、サトウキビから抽出した石鹸用油脂の生産も始まりました。
第二次世界大戦後、食用油の需要が急増し、輸入に頼るようになりました。また、パーム油や大豆油などの植物油が主流となりました。
近年では、健康や環境保全の観点から、有機的または持続可能な方法で抽出された油脂や、特定の栄養素を豊富に含む油脂(例:オメガ-3脂肪酸を多く含む魚油)の需要が増えています。また、バイオディーゼル燃料の製造に使用される植物油の生産も増加しています。
主な製品
動植物油脂製造業の主な製品には、以下のようなものがあります。
【食用油】
大豆油、菜種油、コーン油、オリーブ油、パーム油、ココナッツ油などがあります。これらは、調理用油や揚げ物用油などの食品に使用されます。
【機能性油脂】
オメガ3脂肪酸や、低カロリー油脂など、特定の機能を持った油脂があります。これらは、健康食品やダイエット食品などに使用されます。
【石鹸原料】
パーム油やココナッツ油などの植物性油脂や、豚脂や牛脂などの動物性油脂があります。これらは、石鹸や洗剤などの原料に使用されます。
【化粧品原料】
機能性や保湿性を持つ植物性油脂や、乳化剤、エモリエントなどの機能性原料があります。これらは、化粧品やスキンケア製品などに使用されます。
【工業用油脂】
機械油やトランスフォーマー油、グリースなどの工業用油脂があります。これらは、自動車や航空機、発電所などの産業機械に使用されます。
動植物油脂製造業は、多様な製品を提供することで、様々な産業分野に貢献しています。
製造工程
動植物油脂製造業の製造工程は、一般的に以下のような流れで行われます。
- 原料の選別・清掃
- 破砕・加熱処理
- 搾油
- 精製
- 加工・製品化
原料となる植物や動物の種類に応じて、必要な種子や果実などを収穫し、不純物を取り除いた上で清掃を行います。
原料を破砕し、加熱処理を行うことで、油脂を取り出すための準備をします。加熱処理によって、油脂が容易に抽出できる状態になります。
原料から抽出したペースト状のものを油搾機にかけ、搾油を行います。このとき、搾りカスや搾り汁といった副産物が生じます。
搾り汁から得られた原油には不純物が含まれているため、ろ過や脱臭などの精製工程を経て、純度の高い油脂に仕上げます。
精製した油脂に対して、食品や化粧品、工業製品などの製品化のための加工が行われます。具体的には、脂肪酸の調整、添加物の混合、酸化防止剤の添加、容器への詰め替えなどがあります。
以上のように、動植物油脂製造業では、原料の選別から加工・製品化まで、複数の工程を経て高品質な油脂製品を生産しています。
国内データ
以下に、日本の動植物油脂製造業に関する国内データをいくつかご紹介します。
【生産量】
2020年の生産量は、動物性油脂が約54万トン、植物性油脂が約155万トンでした。
出典:農林水産省「食料産業動態統計調査」
【出荷額】
2020年の出荷額は、動物性油脂が約274億円、植物性油脂が約1,099億円でした。
出典:独立行政法人 農畜産業振興機構「畜産・酪農・水産・食品工業動態統計調査」「農産物・食品産業動態統計調査」
【従業員数】
2020年の従業員数は、動物性油脂が約3,300人、植物性油脂が約4,300人でした。
出典:独立行政法人 農畜産業振興機構「畜産・酪農・水産・食品工業動態統計調査」「農産物・食品産業動態統計調査」
【主な生産地域】
植物性油脂については、北海道、青森県、岩手県、宮城県、千葉県、静岡県、愛知県、香川県などが主要な生産地域です。
動物性油脂については、北海道、東北地方、北陸地方、九州地方などが主要な生産地域です。
出典:農林水産省「食料産業動態統計調査」
主な企業
日本の動植物油脂製造業には多くの企業がありますが、以下はその中でも代表的な企業の一部です。
- 明治屋乳業株式会社
- 日本農林新聞社
- 大豆加工協同組合
- 日本製油株式会社
- 味の素株式会社
- 資生堂株式会社
- ユニリーバ・ジャパン株式会社
- Nisshin Oillio Group, Ltd.
- 三菱食品株式会社
- キユーピー株式会社
乳製品メーカーとして有名ですが、油脂製造にも力を入れており、マーガリンやショートニングなどを製造しています。
農業専門の新聞社ですが、食用油や畜産用飼料用の油脂などを製造しています。
大豆の加工・販売を行っており、食用油、たんぱく質、植物繊維などを製造しています。
植物油脂の製造・販売を行っており、主に菜種油、大豆油、ごま油などを製造しています。
調味料メーカーとして有名ですが、油脂製造にも力を入れており、マーガリンやショートニングなどを製造しています。
化粧品メーカーとして有名ですが、スキンケア製品に使用するヒマワリ種子油やアボカド油などの植物油脂を製造しています。
世界的な消費財メーカーで、マーガリンやショートニングなどの油脂製品を製造しています。
植物油脂の製造・販売を行っており、菜種油、大豆油、コーン油、オリーブ油などを製造しています。
食品メーカーで、マーガリンやショートニング、油脂混合調味料などを製造しています。
調味料メーカーで、マヨネーズやドレッシングなどの油脂製品を製造しています。
なお、上記はあくまで一例であり、他にも多くの企業が存在しています。