電気計測器製造業の概要
電気計測器製造業とは、電気的な信号を測定し、制御するための機器を製造する産業のことを指します。これらの機器は、電力、通信、自動車、航空宇宙、医療機器、産業用機械、家電製品などの分野で広く使用されています。
具体的には、電圧計、電流計、抵抗計、周波数計、オシロスコープ、ロジックアナライザー、信号発生器、データロガーなどがあります。これらの機器は、電子工学や計測制御技術の進歩に伴い、高度な機能や精度が求められるようになっています。
また、電気計測器製造業では、品質管理、環境保護、エネルギー効率の向上などの取り組みが進められています。製品の高度化や環境負荷の低減により、より高度な社会・産業の発展に貢献することが期待されています。
日本の電気計測器製造業について
日本の電気計測器製造業界は、長年にわたり世界的に高い評価を受けてきました。世界市場でのシェアは高く、特に高精度で信頼性が高い製品が求められる分野での地位が強いです。
主要な日本の電気計測器メーカーには、キーエンス、アンリツ、ヨコガワ、アドバンテスト、日立ハイテクノロジーズなどがあります。これらのメーカーは、高度な技術力を持ち、多様な市場に対応できる幅広い製品ラインアップを誇っています。
また、日本の電気計測器製造業界は、高品質な製品を提供するだけでなく、環境負荷の低減や省エネルギー技術の開発など、社会的な責任を果たすことにも力を入れています。
一方で、国内市場の縮小やグローバル競争の激化により、製品の高度化やコスト競争力の向上が求められています。さらに、人材不足や技術革新の加速による市場の変化など、さまざまな課題に直面しています。しかし、高い技術力と長年の経験を持つ日本の電気計測器メーカーは、これらの課題にも積極的に取り組んでいる状況です。
主な製品
電気計測器製造業の主な製品には以下のようなものがあります。
【マルチメーター】
電圧、電流、抵抗、容量、周波数、温度などを測定することができる多機能な計測器です。
【オシロスコープ】
電気信号の波形を観測することができる計測器で、周波数、振幅、位相差、パルス幅、立ち上がり/立ち下がり時間、ジッターなどを測定することができます。
【ロジックアナライザー】
デジタル回路の信号を解析するための計測器で、信号の高低やパルスの時間幅を観測することができます。
【電源計測器】
電力の品質を測定し、電圧、電流、周波数、位相差、力率、ハーモニック歪み、電力量などを測定することができます。
【環境計測器】
環境汚染物質、騒音、振動、気圧、温度、湿度などの測定が可能な計測器で、特に産業廃棄物や排気ガスなどの環境対策に利用されます。
【温度計測器】
温度を測定するための機器で、赤外線温度計、サーモグラフィー、熱電対などがあります。
【電子顕微鏡】
電子ビームを使って試料の表面形状や微細構造を観察することができる機器で、半導体や材料科学などの分野で利用されます。
これらの製品は、さまざまな産業分野で必要とされ、生産ラインの品質管理や新製品開発などに欠かせない計測器として広く利用されています。
製造工程
一般的な電気計測器の製造工程は以下のような手順で行われます。
- 計測器の設計
- 部品の調達
- 部品の組み立て
- 製品の組み立て
- 検査と評価
- 梱包と出荷
製品の機能や性能を決定する設計が行われます。この段階では、市場のニーズや顧客の要望に基づいて設計が進められます。
設計に必要な部品を調達します。高品質で信頼性の高い部品を選定し、コスト面でも優れたものを選択する必要があります。
調達した部品を基板に取り付けて組み立てを行います。基板は、表面実装技術や穴あけ技術を用いて部品を取り付けていきます。
基板やハウジングなどの部品を組み立てて完成品を作ります。この段階では、製品の動作確認が行われ、品質の向上を目指します。
完成品に対して、機能や性能の評価を行います。また、環境試験や信頼性試験なども行い、製品の耐久性や安定性を確認します。
製品を梱包し、出荷先に発送します。製品の保護や輸送中の安全性を考慮し、適切な梱包を行います。
これらの工程は、電気計測器の種類や製品の規模によって異なる場合がありますが、基本的にはこのような流れで製品が作られます。高品質な製品を提供するために、各工程での品質管理が徹底され、製品の品質が確保されるようになっています。
国内データ
以下に、2021年時点での日本国内の電気計測器製造業のデータをいくつか挙げてみます。
- 売上高は、2019年度は約6兆3,000億円でした。
- 生産額は、約4兆4,000億円でした。
- 従業員数は、2019年度には約18万人でした。
- 電気計測器の主要輸出先は、2019年において中国が最大であり、次いでアメリカ、韓国、ドイツ、台湾などが続いています。
出典:経済産業省「平成30年度 製造業の現状・分析」
出典:経済産業省「平成30年度 製造業の現状・分析」
出典:経済産業省「平成30年度 製造業の現状・分析」
出典:財務省「財政白書 平成33年度版」
ただし、2020年以降のデータについては、新型コロナウイルス感染症の影響により統計が不透明な部分もあります。
主な企業
日本国内においては、以下のような電気計測器製造業の主な企業があります。
- 株式会社アンリツ (Anritsu Corporation)
- 株式会社キーエンス (Keyence Corporation)
- 株式会社日立ハイテクノロジーズ (Hitachi High-Tech Corporation)
- 株式会社日立製作所 (Hitachi, Ltd.)
- 株式会社東芝インフラシステムズ (Toshiba Infrastructure Systems & Solutions Corporation)
- 株式会社日本電気 (NEC Corporation)
- 株式会社ヤマハ発動機 (Yamaha Motor Co., Ltd.)
- 株式会社オムロン (Omron Corporation)
これらの企業は、高度な技術力や品質管理体制を持ち、様々な電気計測器製品を開発・製造しています。また、海外展開も積極的に行い、グローバルな市場での競争力を高めています。