工業用送風機(大型ファン)

工業用送風機(大型ファン)とは?

工業用送風機(大型ファン)とは、工場・倉庫・建設現場などの広い空間で空気の循環や換気を行うために使用される大型の送風装置です。高出力で広範囲に風を送り出すことができ、熱気・湿気・粉じんの排出、作業環境の快適化、省エネ空調補助などに大きく貢献します。扇風機の産業用強化版といえる存在で、固定式・移動式・天吊り型など多様な形式があります。

なぜ送風が必要か?

製造現場では、熱源の多い機械、密閉された空間、塗装や溶接による有害物質の発生など、空気環境が悪化しやすい要因が多く存在します。こうした現場での「熱ごもり」「換気不足」「空気のよどみ」を解消し、作業者の安全・快適性を維持するために、工業用送風機の設置が有効です。

主な使用シーン

  • 機械加工エリアでの熱気・粉じん排出
  • 塗装・溶接ブースの換気補助
  • 倉庫・物流センターでの空気循環と冷却
  • 建設現場の湿気・臭気・粉塵除去
  • 空調補助としての省エネ対策(HVLSファン)

工業用送風機の種類と特徴

タイプ 特徴 用途例
床置き移動式(ポータブル型) キャスター付きで移動が容易。現場対応力が高い 臨時換気、作業エリアのスポット送風
天吊り・壁掛け型 スペース不要。常設送風に適す 通路・通風ラインの構築
ダクト接続型 長距離・曲がりのある場所へも風を送れる 塗装・溶接・排気ダクト連動
HVLSファン(大型天井ファン) 高天井用。大量の空気をゆるやかに循環 工場全体の温度ムラ解消・空調補助

導入メリット

  • 作業環境の空気質を改善し、熱中症・粉じん障害のリスクを低減
  • 冷房効率を高め、省エネ空調との相乗効果が得られる
  • 臭気や溶剤の滞留を防ぎ、快適な職場環境を維持
  • 可動式タイプで柔軟に現場レイアウトへ対応可能

導入事例と効果

ある鋳物加工工場では、天井高8mの建屋にHVLSファンを導入。夏場の平均室温が2.8℃低下し、熱中症による作業離脱がゼロに。あわせて空調使用量を年間12%削減し、電力コストも大幅に抑えることに成功しました。

選定時のチェックポイント

  1. 対象空間の広さ(m²)と天井高
  2. 風速・風量(m³/min)と必要な送風範囲
  3. 騒音レベル(dB)と周辺環境への影響
  4. 可動式 or 固定式、安全カバーの有無

使用上の注意点

ファン羽根への異物巻き込みや、送風方向による埃・粉じんの舞い上がりなどに注意が必要です。定期的なフィルター清掃や、ダクト内の換気量調整など、周辺設備とのバランスを見た運用が求められます。

今後の展望

風速センサーや温度センサーと連動して自動運転するスマート送風機の普及が進んでいます。CO₂センサーや空調システムと連携し、現場ごとの気流環境を最適制御することで、作業安全と省エネを両立する“環境制御ツール”としての役割が期待されています。

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