定置生産

定置生産とは?製造業における基本概念

定置生産(ていちせいさん)とは、製品そのものを移動させず、製品を据え置いた場所に人・設備・部材が集まって組立や加工を行う生産方式です。製品が大型・重量物である場合や、移動による品質低下・安全リスクを避けたい場合に採用されやすく、造船、航空機、大型産業機械、建設機械、プラント機器などの製造現場で広く用いられています。

ライン生産のように製品が工程を流れていく方式とは異なり、定置生産では作業者や工具、治具、部材が工程に応じて製品のもとへ移動します。この「人やモノが動く」構造が、定置生産の最大の特徴です。

定置生産が選ばれる代表的なケース

  • 製品が大型・重量物で、搬送コストや安全リスクが高い場合
  • 搬送中に変形や傷、精度劣化が発生しやすい高精度製品
  • 工程途中で仕様変更や調整が入りやすい受注生産・個別設計品
  • 現地据付に近い形で組立や調整を行う必要がある製品
  • 多品種少量生産で、専用ライン化が現実的でない場合

定置生産と他の生産方式の違い

項目 定置生産 ライン生産 セル生産
製品の移動 基本的に移動しない 工程ごとに移動する セル内で移動する場合あり
向いている製品 大型・重量物、個別仕様品 大量生産・標準化製品 多品種中量生産
生産の柔軟性 高い 低め 中程度
管理の難易度 高い(進捗・物流管理が課題) 比較的低い 人のスキル依存が大きい

定置生産のメリット

  • 製品搬送を最小化でき、安全性と品質を確保しやすい
  • 大型製品でも現実的な工程設計が可能
  • 仕様変更や個別対応に柔軟に対応できる
  • 据え付け基準を固定でき、組立精度を保ちやすい
  • 専用ラインが不要なため、工程変更や改善がしやすい

定置生産のデメリットと課題

  • 作業者の移動距離が増えやすく、ムダが発生しやすい
  • 部材供給が複雑になり、欠品や取り違えが起きやすい
  • 工程進捗が見えにくく、遅れの把握が難しい
  • 作業の属人化により、品質や工数にばらつきが出やすい
  • 広い作業スペースが必要となり、レイアウト制約を受けやすい

定置生産を成功させる設計ポイント

製品中心のレイアウト設計

定置生産では、製品を中心に人・設備・物流の動線を設計することが重要です。作業域、物流域、設備域を明確に分け、通路幅や安全スペースをあらかじめ確保することで、作業効率と安全性が向上します。

部材供給の仕組み化

工程単位でのキット化や定時供給を行うことで、探す・待つといったムダを削減できます。部材の置き場を固定し、工程ごとの必要量を明確にすることが欠品防止につながります。

標準作業と品質管理の両立

個別対応が多い定置生産でも、作業手順やチェック項目を標準化することで品質のばらつきを抑えられます。重要工程では記録を残し、手戻り防止を図ることが重要です。

進捗の見える化

工程が並行しやすい定置生産では、進捗状況を可視化する仕組みが不可欠です。工程ボードやデジタル指示、出来高管理を活用することで、遅れの早期発見が可能になります。

定置生産の代表的な活用例

  • 造船:船体ブロック組立、艤装作業
  • 航空機:機体セクションの組立、配線・調整
  • 大型産業機械:フレーム組立、ユニット搭載、試運転
  • プラント機器:タンク、熱交換器、圧力容器の組立
  • 特注装置:受注設計品の組立、立上げ作業

定置生産の改善アプローチ

  • 動線分析による歩行距離削減
  • 工具・治具の定位置管理
  • サブアセンブリ化による現場負荷低減
  • 工程間の役割分担明確化
  • 作業データの蓄積と再発防止への活用

まとめ

定置生産は、大型・重量物や個別仕様品に適した生産方式であり、搬送リスクを抑えながら柔軟な工程運用が可能です。一方で、動線や物流、進捗管理を適切に設計しなければ生産性が低下しやすいという課題もあります。レイアウト設計、部材供給、標準化、見える化を組み合わせることで、定置生産の強みを最大限に引き出すことができます。

よくある質問(Q&A)

Q1. 定置生産はどのような製品に向いていますか?

大型・重量物で搬送が難しい製品や、受注生産で仕様変更が多い製品、高精度で品質確保が重要な製品に向いています。

Q2. 定置生産とライン生産の大きな違いは何ですか?

ライン生産は製品が工程を移動しますが、定置生産は製品を動かさず、人や設備が製品のもとへ移動する点が大きな違いです。

Q3. 定置生産で生産性が下がりやすい理由は何ですか?

作業者の移動距離増加、部材探索や欠品、進捗の見えにくさなどが重なり、ムダが発生しやすいためです。

Q4. 定置生産の改善で最初に取り組むべきことは何ですか?

部材の置き場整理と動線改善、工程ごとの標準作業整備から着手すると、短期間で効果が出やすくなります。

Q5. 定置生産でもデジタル化は有効ですか?

有効です。作業指示や進捗管理のデジタル化により、見える化が進み、定置生産特有の管理課題を補うことができます。

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