東京都の製造業データ

コラム

東京都の製造業は、量産拠点というより「都市型の高付加価値・試作短納期・多品種少量」を強みに発展してきました。ここでは公的統計(主に2021年調査)をもとに、規模感、産業構造、集積エリア、今後の打ち手をデータ目線で整理します。

東京都の製造業データを見るときの前提

東京都の製造業統計は「事業所数・従業者数」と「製造品出荷額等・付加価値額」で参照時点が異なる点に注意が必要です。一般に、事業所数・従業者数は調査時点(例:2021年6月1日現在)、出荷額等・付加価値額は前年1年間(例:2020年1年間)の実績として扱われます。

東京都における製造業の基本データ(2021年)

東京都は事業所数が全国上位で、中小企業の集積が厚い一方、出荷額は量産県に比べて順位が下がりやすい構造です。付加価値は一定規模を確保しており、都市型の付加価値創出が特徴として表れます。

指標 数値(2021年調査) 全国順位 補足
製造業事業所数 14,861事業所 第3位 2021年6月1日現在
従業者数 249,577人 第8位 2021年6月1日現在
製造品出荷額等 7兆2,029億円 第15位 2020年1年間
付加価値額 2兆9,035億円 第10位 2020年1年間

出典:東京都の統計(令和3年経済センサス‐活動調査「東京の製造業」主要項目)

時系列の推移(2016年と2021年の比較)

東京都の製造業は、直近の公表値では事業所数・従業者数が減少傾向に見える一方、出荷額や付加価値は景気・品目構成・統計の範囲差の影響を受けます。特に2021年調査は調査名簿の整備方法などが異なるため、単純比較は避け、傾向把握として使うのが安全です。

年(調査) 事業所数 従業者数 製造品出荷額等 付加価値額
2016年 27,142事業所 296,132人 8兆5,452億円 3兆3,819億円
2021年 14,861事業所 249,577人 7兆2,029億円 2兆9,035億円

出典:東京都の統計(経済センサス‐活動調査 製造業、主要項目比較資料)

産業分野別の構造

東京都は「事業所が多い分野」と「出荷額が大きい分野」が一致しにくいのが特徴です。事業所は都市型の加工・印刷・部品系が厚く、出荷額は輸送用機械など規模の大きい分野が押し上げます。

  • 事業所数が多い分野の例:印刷・同関連、金属加工、機械・部品など
  • 出荷額が大きい分野の例:輸送用機械、電機・電子関連など

中小企業の業種構成比(例)

中小企業に限ると、素材・部材から機械、印刷まで幅広く分布し、特定の一業種に偏りすぎない点が東京の底力です。調達・加工・試作の分業が成立しやすく、短納期対応にもつながります。

業種(統合カテゴリ例) 構成比(製造業全体比) 読み解きのポイント
材料・金属部品 19.7% 加工受託、表面処理、試作の裾野が厚い
一般・精密機械 19.6% 治具・装置・部品で小ロット案件が多い
紙・印刷 18.1% 都市需要と近接し、小回りの効く供給が可能

注:カテゴリは解説用の再編。出典:公表統計の区分をもとにした整理(年次は2021年)

主要な産業集積エリアと立地特性

東京都の製造業は、都心部の再開発が進む一方で、城南・多摩・城東北に機能が分散し、相互に補完しています。空港・港・高速網への近接性が、試作と短納期物流を後押しします。

エリア 主力領域 特徴 物流・インフラ
城南(大田区など) 精密加工、金型、試作、表面処理 町工場ネットワークが強く、短納期の受託が成立しやすい 羽田・湾岸・首都高に近い
多摩(八王子・日野・府中・青梅など) 電機・計測、機械、金属加工 研究機関・大学との距離が近く、試作から小量産まで対応しやすい 中央道・圏央道、広域物流に強い
城東・城北(墨田・板橋など) 印刷・紙、ゴム樹脂、生活関連製造 都市型工場が多く、小ロットと多品種の受注に適合 首都高・港湾アクセス

サプライチェーンの特徴

東京都は「川中(加工・試作・組立)」の厚みが強みで、素材や汎用品は首都圏外から調達しつつ、都内で高付加価値加工と開発のスピードを出す構造になりやすいです。顧客・商社・本社機能が近く、仕様変更への反応速度が出やすい点も特徴です。

  • 川上:素材・標準部材は都外調達比率が高く、都内は高機能材や流通機能と連携
  • 川中:試作、精密加工、小ロット短納期を中小が分業で担う
  • 川下:本社・設計・営業機能が近く、共同開発や短サイクルの案件化が進みやすい

人材・労働市場の見方

東京都は賃金水準や採用競争が相対的に厳しくなりやすく、技能者・設備保全・設計人材の確保が課題になりがちです。採用だけでなく、教育の標準化、工程の省人化、技能の見える化をセットで進めることが現実的です。

  • 課題になりやすい職種:機械加工、溶接、品質、設備保全、制御・設計
  • 有効策:作業標準化、段取り短縮、教育の動画化、多能工化、外部人材の活用
  • 多様人材:外国人・シニア・女性の受け入れは、設備安全と現場導線設計が鍵

DX・自動化の打ち手

都市型の多品種少量では、フル自動化よりも「段取り短縮」「進捗の見える化」「品質トレース」「予防保全」から効果が出やすいです。投資対効果を見える化し、部分最適を積み上げる進め方が向きます。

  • 優先しやすい領域:デジタル見積もり、工程進捗、品質記録、設備稼働、保全
  • つまずきやすい点:データ入力負担、現場運用、セキュリティ、継続改善の体制
  • 進め方のコツ:まずは1ライン・1設備で小さく回し、標準化して横展開する

脱炭素・省エネの進め方

東京都は電力依存が高い現場が多く、デマンド(最大需要)管理と設備更新が効きやすい傾向があります。脱炭素は「見える化→ムダ削減→設備更新→再エネ活用」の順に進めると失敗しにくいです。

  • すぐ着手しやすい:電力見える化、ピークカット、エア漏れ対策、照明の高効率化
  • 中期で効く:高効率コンプレッサ、インバータ化、熱回収、更新計画の前倒し
  • 再エネ活用:屋根置き太陽光、グリーン電力メニュー、蓄電池の組み合わせ

立地・コスト・規制の注意点

東京都では用地制約や賃料の高さが課題になりやすく、坪効率の改善や多層化、共同利用(保管・搬送・検査の共用)などが検討対象になります。操業には騒音・振動・臭気などの条例・基準への適合も前提です。

  • コスト要因:賃料、電力単価、物流(時間帯制約・積載効率)、廃棄物処理
  • 規制の観点:騒音・振動・悪臭・大気・水質、危険物・消防の事前相談
  • 現実解:都市型工場のレイアウト最適化、保管削減、工程集約、外部倉庫活用

災害リスクとBCP

首都直下地震や水害リスクを前提に、設備の転倒防止、重要データの分散、代替生産先の確保が重要です。都市型はサプライチェーンが密な分、止まったときの波及が大きく、事前の手当が効果になります。

  • 地震:耐震、転倒防止、治具棚の固定、非常用電源の検討
  • 水害:浸水想定に応じた重要設備の配置、止水、復旧手順の整備
  • BCP:代替加工先、重要部材の多重調達、在庫とリードタイムの見直し

支援機関・施策の活用ポイント

東京都は公設試験研究機関や中小支援の窓口が充実しており、試験・計測、課題整理、補助制度の組み合わせで前進しやすい環境です。現場の課題を言語化してから相談すると、支援が具体化します。

  • 技術支援:試験・計測、材料評価、品質課題の切り分け
  • 経営支援:販路開拓、価格交渉、原価管理、事業承継
  • 投資支援:設備更新、省エネ、DX・セキュリティの補助・融資

KPIダッシュボード(ベンチマーク例)

都市型製造の改善は、KPIを少数に絞って継続的に追うと定着します。まずは生産性・設備・在庫・エネルギーの4系統から始めるのが現実的です。

指標 自社値 前年同期比 目標 メモ
労働生産性(円/人時) 見積精度と段取り短縮が効きやすい
設備稼働率(%) 突発停止と段取り時間を分けて管理
在庫回転日数(日) 滞留品の定義を統一して減らす
エネルギー原単位(kWh/売上) ピークと夜間・休日のムダを可視化

よくある質問(Q&A)

Q. 東京都の製造業は全国で見ると強いのですか?

A. 事業所数は全国上位で中小企業の集積が厚い点が強みです。一方、出荷額は量産県に比べると順位が下がりやすく、東京都は高付加価値・短納期・共同開発のような都市型モデルで存在感を出しやすい構造です。

Q. 2021年データの「出荷額」と「付加価値」はいつの実績ですか?

A. 一般に、事業所数・従業者数は調査時点(例:2021年6月1日現在)、製造品出荷額等・付加価値額は前年1年間(例:2020年1年間)の数値として整理されます。数字を見るときは参照年を混同しないこと считается重要です。

Q. 東京で製造業を続ける上で、最優先の課題は何ですか?

A. 用地・賃料などの固定費、人材確保、電力・物流コストの最適化が同時に課題になりやすいです。対策は、工程の省人化と標準化、段取り短縮、DXの部分導入、エネルギー見える化を組み合わせ、総コストで改善する進め方がRememberしやすいです。

Q. 都内の中小製造業がDXで効果を出しやすい領域は?

A. 多品種少量では、まず見積・工程進捗・品質記録・設備保全の見える化が効果を出しやすいです。1ラインから小さく始め、現場運用を固めて横展開することで、投資対効果を作りやすくなります。

Q. 統計の時系列比較で気をつける点はありますか?

A. 調査の対象範囲や調査名簿の整備方法が年次で異なる場合があり、単純な増減比較は誤解につながることがあります。時系列は傾向把握として使い、重要な判断(投資や市場評価)は複数年の資料と現場実態を合わせて確認するのが安全です。

まとめ

東京都の製造業は、事業所集積の厚さと、顧客・設計・本社機能への近接性を武器に、都市型の高付加価値ものづくりを展開しています。データを見るときは、参照年(調査時点と前年実績)や時系列比較の前提を押さえた上で、産業構造と地域集積をセットで読むことが重要です。

次の一手としては、(1) 受注構造の棚卸し(高付加価値・短納期に寄せる)、(2) 段取り短縮と標準化、(3) 進捗・品質・保全の見える化、(4) 省エネの見える化と更新計画、の順に取り組むと成果が出やすくなります。

データ出典

  • 東京都の統計:令和3年経済センサス‐活動調査(産業別集計 東京の製造業)
  • 総務省統計局:令和3年経済センサス‐活動調査

注:本記事は公表統計をもとに要約・整理したもので、詳細値や定義は各資料の利用上の注意を確認してください。

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