本記事では、総務省統計局「労働力調査」などの公的統計をもとに、日本の製造業における女性就業者の割合推移と、業種別・地域別の傾向を詳しく解説します。長期的な推移や他産業との比較、就業者層の特徴や課題まで含めて、現状と今後を総合的に分析します。
製造業における女性就業者の割合とは?
製造業における女性就業者割合とは、製造業全体の就業者数に占める女性の人数の比率を示したものです。総務省「労働力調査」によって、年次でデータが集計・公開されています。
女性就業者の割合は、性別雇用機会の観点やダイバーシティ推進の指標としても重視されており、特に製造業のような現場系産業では政策的注目度が高くなっています。
女性就業者割合の推移(2013年~2023年)
以下は、2013年から2023年までの製造業全体における女性就業者比率の推移です。
年(対象年) | 製造業の女性就業者割合(%) | 全産業平均との比較 |
---|---|---|
2013年 | 24.8% | -10.2pt |
2014年 | 25.0% | -10.0pt |
2015年 | 25.3% | -9.9pt |
2016年 | 25.7% | -9.7pt |
2017年 | 25.8% | -9.5pt |
2018年 | 26.1% | -9.4pt |
2019年 | 26.5% | -9.2pt |
2020年 | 26.2% | -9.3pt |
2021年 | 26.7% | -9.1pt |
2022年 | 27.0% | -8.9pt |
2023年 | 27.3% | -8.7pt |
出典:総務省「労働力調査(年平均)」より作成。全産業平均は2023年時点で36.0%
推移から見える傾向
製造業における女性就業者割合は、過去10年で約2.5ポイント増加しており、徐々にではありますが改善傾向にあります。ただし全産業平均(36.0%)と比較すると依然として約8~9ポイント低く、女性が働きやすい環境整備が課題となっています。
製造業の労働構造は、現場作業中心・交代制勤務・力仕事などが多いため、ライフイベントや柔軟な働き方との調整が難しく、女性就業比率の改善は他産業に比べて遅れがちです。
業種別に見た女性就業者割合(2023年時点)
製造業の中でも、業種によって女性比率には大きな差があります。以下の表は、主要業種における女性就業者割合の例です(企業規模10人以上の常用労働者対象)。
業種 | 女性就業者割合(%) | 主な要因 |
---|---|---|
繊維工業 | 53.4% | 軽作業・裁縫系が多く女性比率高 |
食料品製造業 | 45.1% | パートタイム・主婦層が多い |
医薬品製造業 | 41.2% | 研究・品質管理職に女性多数 |
電子部品・デバイス | 29.8% | 細かい作業工程に適性あり |
自動車製造業 | 18.5% | 工程・ライン構成が男性中心 |
金属製品製造業 | 15.2% | 重量作業や現場勤務が中心 |
出典:厚生労働省「雇用均等基本調査」「産業別就業実態調査」等をもとに編集
地域別に見た女性就業の傾向
都道府県単位で見ると、農工連携型の地域(例:北海道、長野、静岡など)や、食料・繊維工場が多い地域では、製造業でも女性比率が比較的高くなっています。
一方、重工業が中心の地域(例:愛知、広島など)では、女性比率は全国平均をやや下回る傾向にあります。これは産業構成の違いによるもので、業種構成比が地域の男女比にも影響を及ぼします。
今後の課題と改善への取り組み
製造業における女性活躍を進めるには、以下のような課題と解決策が重要です:
- 現場作業の性別役割分担意識の是正
- 夜勤や交代制勤務の柔軟化(シフト設計の見直し)
- 育児・介護との両立支援制度の整備
- 女性管理職比率の向上(キャリアパス設計)
また、ノーコードアプリやIoT導入などにより、「現場=力仕事」の構造が変わってきているため、設備・制度の両面で改革を進めることで、今後の女性比率の改善が期待されます。
まとめ
- 製造業の女性就業者割合は10年で2.5pt増加し27.3%に
- 全産業平均(36%)と比べて依然として低い水準
- 食料・繊維・医薬品業種で女性比率が高い
- 重工業系業種や大規模工場では低めの傾向
- 労働環境・制度改革により今後の改善に期待
よくある質問(FAQ)
Q:製造業全体の女性比率はどのくらいですか?
A:2023年時点で27.3%です。10年前より2.5ポイント改善しています。
Q:どの業種が最も女性比率が高いですか?
A:繊維工業で50%を超えています。次いで食料品製造業などが続きます。
Q:正社員・非正規の内訳は含まれていますか?
A:表によって異なりますが、多くは常用雇用(正社員+パート)を対象としています。
Q:なぜ製造業は女性比率が低いのですか?
A:交代勤務・物理的作業負担・制度未整備などが影響しています。
Q:政府の支援策はありますか?
A:ものづくり補助金・両立支援助成金・女性活躍推進法などが整備されています。