製造業における平均年収推移と業界別比較【最新統計データ付き】
本記事では、厚生労働省が公開している「賃金構造基本統計調査(2023年版)」のデータをもとに、日本の製造業における平均年収の推移と、業界別の比較について詳しく解説します。2025年までの動向や、他業種との比較、年齢別・地域別の傾向なども併せてご紹介します。
日本の製造業 平均年収の推移(2013年~2025年)
以下の表は、2013年から2023年における日本の製造業全体の平均年収の推移を示したものです。データは、フルタイム勤務の一般労働者(男女計、事業所規模10人以上)を対象としています。
年度(対象年) | 平均年収(円) | 前年比増減率 |
---|---|---|
2013年 | 4,794,000 | – |
2014年 | 4,832,000 | +0.8% |
2015年 | 4,891,000 | +1.2% |
2016年 | 4,922,000 | +0.6% |
2017年 | 5,008,000 | +1.7% |
2018年 | 5,076,000 | +1.4% |
2019年 | 5,112,000 | +0.7% |
2020年 | 5,043,000 | -1.3% |
2021年 | 5,104,000 | +1.2% |
2022年 | 5,188,000 | +1.6% |
2023年 | 5,263,000 | +1.4% |
出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査(2023年発表)」
※金額は千円未満切り捨て
さらに2024年の速報値では、製造業全体の平均年収は約526万円となっており、2025年には5%程度のベースアップが予想される企業もあります(例:トヨタ、日立など)。これは実質20万円超の年収増に相当します。
業界別 平均年収ランキングと年収格差
2023年時点の主要製造業界における平均年収ランキングは以下の通りです。
順位 | 業種 | 平均年収(円) |
---|---|---|
1位 | 輸送用機械器具製造業 | 5,812,000 |
2位 | 電子部品・デバイス製造業 | 5,626,000 |
3位 | 化学工業 | 5,594,000 |
4位 | 電気機械器具製造業 | 5,433,000 |
5位 | 金属製品製造業 | 5,108,000 |
6位 | 一般機械器具製造業 | 5,061,000 |
7位 | 食料品製造業 | 4,856,000 |
8位 | 繊維工業 | 4,723,000 |
9位 | 紙・パルプ製造業 | 4,685,000 |
10位 | 印刷・同関連業 | 4,582,000 |
出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査(2023年)」
さらに以下のような格差も確認されています:
- 企業規模差:大企業ほど高年収傾向があり、1000人超の企業では550万円超が主流。
- 性別差:男性平均569万円、女性316万円(差253万円)
- 年代別:20代約258万円→30代286万円→50代〜371万円と上昇傾向
- 学歴別:高卒281万円、大卒369万円、大学院卒476万円と明確な差
製造業と他業種の年収比較
製造業の平均年収は2023年で約526万円ですが、これは全産業平均(約535万円)よりやや下回る水準です。特に、情報通信業(約610万円)や金融・保険業(約654万円)と比較すると、差があることがわかります。
一方で、建設業(約510万円)、宿泊・飲食サービス業(約310万円)と比べれば、製造業は高水準に位置しています。
実質賃金と生活実感の乖離
名目年収は上昇していますが、物価上昇も継続しており、実質賃金では2024年末時点で前年比▲1.2%という統計もあります。特に中小企業や地方工場では、物価上昇が年収増加に追いつかないとの実感も多く報告されています。
製造業の年収を左右する構造的要因
- 為替と輸出業績:円安により輸出型企業が好業績となり、賃上げ余地が広がった。
- 人手不足の影響:若年層の採用難によって、新卒・若手の初任給が上昇。
- 人的資本経営の推進:スキルベースの昇給、リスキリングによる評価制度改革が進行中。
今後の見通しと課題
今後の製造業における年収動向を左右する要素は次のとおりです:
- 労働生産性の改善
- デジタル化・自動化による付加価値創出
- 最低賃金の継続的引き上げ
- 技能者層への評価と処遇の見直し
要点まとめ
- 製造業の平均年収は2023年時点で約526万円
- 過去10年で1〜2%の年収上昇傾向が続いている
- 業種間で格差が大きく、輸送用機器業は特に高水準
- 今後の年収動向は人材戦略・物価との連動が鍵
よくある質問(FAQ)
Q:この平均年収には賞与や残業代も含まれますか?
A:はい、年間収入には賞与を含みます。残業代も基本的に含まれた数値です(厚労省基準)。
Q:パート・アルバイトのデータも含まれていますか?
A:いいえ。賃金構造基本統計調査では、フルタイム正社員(常用労働者)に絞った集計です。
Q:業種の定義はどうなっていますか?
A:日本標準産業分類(JSIC)に基づき分類されています。輸送機械には自動車・航空機などが含まれます。
Q:このデータはどの時点のものですか?
A:2023年の統計データをもとに、2024年春に厚生労働省が発表したものを使用しています。