2025年度の賃上げ・春闘動向とは?
2025年度の春闘(春季労使交渉)は、記録的な賃上げが続く中、3年連続で大幅なベースアップ(ベア)が実施される見通しとなりました。物価上昇や人材不足、企業業績の回復を背景に、製造業をはじめとする多くの業種で賃上げの波が広がっています。
大手企業では5%前後の賃上げが相次ぎ、中小企業も追随する形で賃金水準の底上げが進んでいます。本記事では、最新統計をもとに、2025年春闘の動向と今後の展望をわかりやすく解説します。
春闘とは何か?賃上げとの関係
春闘とは、毎年春に行われる労働組合と企業の賃金・労働条件交渉のことです。特に製造業を中心とした大企業では、労使間の協議により「定期昇給」や「ベースアップ(基本給の底上げ)」が決定されます。
春闘の成果は他の企業・産業にも波及効果があり、日本の労働市場全体に影響を与えるため、政府や日銀も注視しています。
2025年度の賃上げの特徴:3年連続の高水準
- 2025年は3年連続の「記録的賃上げ」となる見込み
- 大手企業の月例賃金の平均引き上げ率:4.5%以上
- 一部企業では、基本給+24,000円(前年比)を超える例も
トヨタ自動車は全職種で満額回答+ボーナス7.6ヶ月分、日立製作所は6.2%の賃上げを表明するなど、実質賃金の回復を意識した対応が目立ちます。
業種別の賃上げ動向:製造業がリード
業種 | 平均賃上げ率(2025見通し) | 主な賃上げ理由 |
---|---|---|
製造業(自動車・機械) | 5.2% | 人手不足、インフレ対策、生産性向上 |
情報通信業 | 4.3% | AI・IT人材獲得競争 |
建設業 | 3.8% | 熟練労働者不足、働き方改革 |
卸売・小売業 | 2.5% | 原価上昇への対応、従業員確保 |
中小企業の対応状況:賃上げ意向は7割以上
帝国データバンクの2025年調査によると、中小企業の69.8%が賃上げを予定しており、その平均上昇率は3.2%と試算されています。
- 中小企業の賃上げ理由:人材流出の抑制、採用競争力の強化
- ネックとなる課題:原価上昇による利益圧迫、価格転嫁の難しさ
実際、価格転嫁が進んでいない企業では「賃上げの原資を確保できない」との声も多く、政府の支援制度や税制措置への期待も高まっています。
政府・経済団体の動向:インフレ目標と連携
政府は「物価上昇を上回る持続的な賃上げ」を政策目標として掲げており、2024年度補正予算でも人手不足対応やリスキリング支援を含む中小企業支援策を強化しています。
日本経済団体連合会(経団連)も「賃上げは企業の社会的責務」とし、加盟企業に対し積極的な対応を呼びかけています。
賃上げ率の推移(2015年〜2025年)
年度 | 平均賃上げ率 | 主な特徴 |
---|---|---|
2015年 | 2.38% | デフレ脱却のための初期的な賃上げ誘導 |
2016年 | 2.14% | 円高の影響で企業収益が伸び悩み |
2017年 | 2.11% | 経済の踊り場、物価と賃金の乖離 |
2018年 | 2.07% | 政府の「3%賃上げ」呼びかけが話題に |
2019年 | 2.11% | 堅調な景気と人手不足が後押し |
2020年 | 1.91% | コロナ影響による賃上げ抑制 |
2021年 | 1.86% | 感染拡大下での慎重な交渉 |
2022年 | 2.20% | 回復基調と賃金改善への再始動 |
2023年 | 3.58% | 30年ぶりの高水準。トヨタなど満額回答続出 |
2024年 | 5.20% | 過去最高レベルの平均賃上げを記録 |
2025年 | 4.5〜5.0%(見通し) | 3年連続の大幅ベースアップが主流に |
出典:経団連、連合、帝国データバンク調査(2023〜2025年)
労働者側の評価と生活実感の乖離
名目賃金の上昇が続く一方で、労働者の生活実感は改善していないという声も少なくありません。特に中小企業や非正規雇用者層では、物価上昇に賃金が追いつかないという意見が目立ちます。
厚生労働省の「実質賃金指数(2024年末時点)」では前年比▲1.2%となっており、今後は「実質ベースでの賃上げ」が持続可能性の鍵となります。
賃上げと人的資本経営・リスキリングの連動
賃上げと同時に注目されているのが、「人的資本経営」と「リスキリング」の推進です。特に製造業では、技能の高度化とDX対応のため、教育訓練費の増加と連動した賃金体系改革が始まっています。
- 再教育を条件とした昇給制度(例:資格取得で月給+5,000円)
- ジョブ型人事制度への移行と連動したベースアップ
賃上げを一過性で終わらせないためにも、「成長する人材への投資」という観点が今後のスタンダードとなるでしょう。
まとめ:2025年春闘が示す日本経済の転換点
2025年度の賃上げ・春闘動向は、日本の雇用・人材市場の大きな転換点を象徴しています。製造業を中心に実質賃金の回復が進めば、長らく停滞していたデフレ的傾向からの脱却にもつながるでしょう。
一方で、中小企業や地方企業にとっては、コスト上昇と価格転嫁のバランスをどう取るかが課題です。政府支援と民間の成長戦略を両立させる形で、持続的な賃上げ基盤の構築が求められます。