タイヤ製造業

ゴム製品製造業
2023.03.18

タイヤ製造業の概要

タイヤ製造業とは、自動車やオートバイ、自転車などの車両に使用されるタイヤを製造する産業のことです。タイヤは、車両が接地する部分であり、様々な路面や気象条件に対応する必要があります。

業者は、様々なサイズや形状のタイヤを製造し、自動車メーカーや交通機関、消費者などに販売します。

この業界は、自動車産業や交通産業の一部であり、高い技術力や品質管理が求められます。また、環境保護や省エネルギー化など、社会的課題にも取り組んでいます。

歴史

タイヤ製造業の歴史は、19世紀後半に遡ります。以下に、その歴史の重要なポイントを時系列順に示します。

  1. 1844年

    2. チャールズ・グッドイヤーがゴムの硫黄との加熱処理である加硫法を発明。これにより、ゴムが耐久性を持ち、様々な用途で使われるようになった。

  2. 1846年

    3. ロバート・ウィリアム・トムソンが空気入りのゴム製タイヤの特許を取得。しかし、当時はまだ実用化されず、後にジョン・ボイド・ダンロップがこれを発展させる。

  3. 1888年

    4. ジョン・ボイド・ダンロップが、自転車用の空気入りゴムタイヤを実用化。これが現代のタイヤ製造業の始まりとされる。

  4. 1895年

    5. エドゥアール・ミシュランとアンドレ・ミシュランが、自動車用の取り外し可能な空気入りゴムタイヤを開発。これが、自動車産業の発展に大きく寄与した。

  5. 1904年

    6. アメリカのベンジャミン・F・グッドリッチが、世界初のコードタイヤを開発。コードタイヤは、ゴムと繊維を組み合わせたもので、耐久性が向上し、さらに高速走行に適した。

  6. 1910年代～1920年代

    7. タイヤ業界が拡大し、グッドイヤー、ミシュラン、ブリヂストン、ピレリ、コンチネンタルなどの大手メーカーが成立。

  7. 1946年

    8. ミシュランがラジアルタイヤを開発。従来のバイアスタイヤよりも耐久性や燃費性能が向上し、世界中で普及。

  8. 1970年代～1980年代

    9. 環境保護や省エネルギーが重視されるようになり、低燃費タイヤやリサイクルタイヤの開発が進む。

  9. 2000年代～現在

    10. 環境問題や資源節約の観点から、グリーンタイヤ（燃費性能に優れたタイヤ）やサスティナブルタイヤ（環境に優しい素材や製造プロセスを用いたタイヤ）の開発が盛んになる。

  10. タイヤプレッシャーモニタリングシステム（TPMS）の導入

    11. 2000年代初頭より、タイヤの空気圧を監視し、ドライバーに通知するシステムが普及。これにより、適切な空気圧の維持が容易になり、燃費やタイヤの寿命が改善される。

  11. セルフシーリングタイヤとランフラットタイヤの開発

    12. パンク時にも走行を継続できるタイヤ技術が開発され、安全性が向上。また、パンク修理キットや空気圧補充システムも普及。

  12. インターネットとデジタル技術の進化

    13. タイヤ製造業もデジタル技術の影響を受け、製造プロセスや販売方法が変化。オンラインショッピングの普及により、消費者は簡単にタイヤを比較・購入できるようになる。また、工場ではロボットやAI技術が導入され、生産効率が向上。

  13. スマートタイヤの開発

    14. 近年では、センサーや通信技術を利用したスマートタイヤが開発されている。これらのタイヤは、摩耗状況や路面状況をリアルタイムで把握し、ドライバーや自動運転システムに情報を提供することが可能。

日本のタイヤ製造業について

日本のタイヤ製造業界は、世界的に有名な大手メーカーが多く存在し、高品質のタイヤを供給しています。主要な企業には、ブリヂストン、住友ゴム工業、東洋ゴム工業、横浜ゴム、トーヨータイヤなどがあります。

これらの企業は、自動車メーカーに対する純正タイヤの供給だけでなく、市販向けのタイヤやバイク用タイヤ、トラック用タイヤ、建設機械用タイヤなど、多様な製品を製造しています。

日本のタイヤ製造業界は、高い品質管理能力や技術力が求められる競争の激しい産業であり、積極的に研究開発を行っています。また、環境配慮や省エネルギー化にも注力しており、製品のエネルギー効率向上やCO2排出削減などの取り組みを行っています。

日本のタイヤ製造業界は、グローバル市場においても高い評価を受けており、世界中の自動車メーカーに対して高品質な製品を供給しています。

主な製品

タイヤ製造業の主な製品には以下のようなものがあります。

【自動車用タイヤ】
自動車に使用されるタイヤで、乗用車、トラック、バス、スポーツカーなどに使用されます。さまざまなサイズやタイプのタイヤがあり、使用環境によって選ばれます。

【オートバイ用タイヤ】
オートバイに使用されるタイヤで、スポーツバイク、クルーザー、スクーター、アドベンチャーバイクなどに使用されます。オンロード用、オフロード用、スポーツ用、ツーリング用など、多様な種類があります。

【自転車用タイヤ】
自転車に使用されるタイヤで、ロードバイク、マウンテンバイク、クロスバイク、折り畳み自転車などに使用されます。タイヤの幅やパターンは、使用用途によって異なります。

【航空機用タイヤ】
航空機に使用されるタイヤで、商用旅客機、軍用機、ヘリコプターなどに使用されます。高い耐久性と安定性が求められます。

【建設機械用タイヤ】
建設機械に使用されるタイヤで、重機、ブルドーザー、油圧ショベル、クレーン車などに使用されます。大型で耐久性が高く、重い荷重に耐える必要があります。

以上のように、タイヤ製造業は、多様な分野で製品を供給しています。

製造工程

一般的なタイヤ製造の工程は以下のようになります。

  1. 材料の調達

    2. タイヤ製造に必要な原材料であるゴム、炭素黒、鉄、ナイロン、スチールなどを調達します。

  2. 混練

    3. 調達したゴムと炭素黒を混練し、ゴムの柔軟性を増し、耐久性を向上させます。

  3. 前加硫

    4. 混練したゴムに加硫剤を加え、一定の硬度を持たせます。

  4. タイヤ製造機械による成形

    5. 加硫したゴムをタイヤ製造機械で成形し、タイヤの形状をつくります。成形されたタイヤは、タイヤ成形機から取り出されます。

  5. ビルダー

    6. 成形されたタイヤにコードと呼ばれるスチール線を巻きつけ、強度を増します。

  6. 後加硫

    7. ビルダーで巻きつけたコードとタイヤを一体化させるために、タイヤ全体に加硫剤を塗布して再度加熱処理を行います。

  7. パターンの成形

    8. タイヤに溝やブロックを形成するために、タイヤ成形機でパターン成形を行います。

  8. 硬度測定

    9. タイヤの硬度を測定し、仕様に合わせた硬度に調整します。

  9. X-ray検査

    10. タイヤ内部に異物が混入していないか、X線検査を行い、品質チェックを行います。

  10. 車輪の組み立て

    11. タイヤをホイールに組み込み、バランス調整を行います。

以上のように、タイヤ製造には複数の工程があり、それぞれの工程で繊細な作業が必要です。

使用している主要な技術や機器

さまざまな技術や機器が使用されていますが、以下にそのいくつかを説明します。

  • バンバリーミキサー

    • ゴムを練り混ぜるための機械で、原料ゴム、化学薬品、炭素ブラックなどを一定の比率で練り合わせて、タイヤに適したゴム材料を作ります。

  • カレンダーロール

    • ゴムシートを加熱圧縮し、一定の厚さに均一化するための機械です。これにより、タイヤのトレッドやサイドウォール部分などに使用されるシート状のゴム材料が製造されます。

  • エクストルーダー

    • 溶融したゴムを射出し、特定の形状に成形する機械です。タイヤのトレッド部分やビード部分の成形に使用されます。

  • コードカレンダー

    • 繊維や鋼線などのコード材料をゴムと一体化させる機械です。タイヤの強度や柔軟性を向上させるために、ゴムとコード材料を組み合わせた層が作られます。

  • タイヤビルダー

    • ゴムシートやコード材料を組み合わせて、タイヤの形状を作り出す機械です。この機械を使って、トレッド部分、サイドウォール部分、ビード部分などが組み立てられ、未加硫のタイヤ（グリーンタイヤ）が作られます。

  • キュリングプレス

    • グリーンタイヤを加熱・加圧して硫黄を反応させ、加硫ゴムに変換する機械です。このプロセスにより、タイヤの強度や耐久性が大幅に向上します。

  • 検査装置

    • 製造されたタイヤの品質を検査するための機器です。X線検査、バランス検査、外観検査などが行われ、製品の品質が保証されます。

  • ロボットとオートメーション

    • 近年では、ロボットやオートメーション技術が導入され、タイヤ製造プロセスの効率化や品質向上が図られています。ロボットを使用することで、重い物を持ち上げたり、繰り返し作業を行ったりするような人間にとって困難なタスクが効率的に実行されます。また、オートメーション技術により、プロセス全体がより一貫した品質でタイヤを製造できるようになります。

  • AI（人工知能）とビッグデータ

    • タイヤ製造業でもAIやビッグデータが活用されており、生産プロセスの最適化や品質管理に役立てられています。データ解析を通じて、製造条件や製品の品質に影響を与える要因を把握し、生産効率や品質向上のための改善策を見つけることができます。

  • 3Dプリンティング

    • 近年では、3Dプリンティング技術がタイヤ製造業にも導入されつつあります。特にプロトタイプの製造や、カスタマイズされたタイヤの生産に活用されています。将来的には、3Dプリンティング技術がさらに進化し、タイヤ製造業に大きな変化をもたらす可能性があります。

国内データ

以下に、日本のタイヤ製造業界に関する最新のデータをいくつか紹介します。

  • 2020年時点で、日本国内にあるタイヤメーカーの数は、17社です。
  • 2020年における日本国内のタイヤ生産量は、約1億8,400万本でした。
  • 日本のタイヤ生産量のうち、輸出量は約8,500万本で、主要な輸出先はアジア地域、北米地域、欧州地域です。
  • 一方で、日本のタイヤ輸入量は、2020年には約2,400万本であり、主な輸入元はタイ、中国、韓国です。
  • 日本国内のタイヤ市場において、軽自動車向けタイヤが最も需要が高く、次いで乗用車向けタイヤ、トラック・バス向けタイヤが続きます。

日本のタイヤ製造業においては、環境への配慮が重要なテーマとなっており、燃費性能の向上や低燃費タイヤの普及が進んでいます。

主な企業

世界的に有名なタイヤメーカーはいくつかありますが、日本国内においては以下のような企業が代表的です。

  1. ブリヂストン株式会社

    2. 世界最大のタイヤメーカーであり、日本国内でもトップシェアを誇ります。主力ブランドは「ブリヂストン」。

  2. 住友ゴム工業株式会社

    3. 日本国内で2番目に大きなタイヤメーカーで、主力ブランドは「ダンロップ」。

  3. 三菱重工業株式会社

    4. 同社のグループ企業である三菱日立パワーシステムズが、産業用タイヤの分野で主要な存在です。

  4. 東洋ゴム工業株式会社

    5. 主に自動車用タイヤや二輪車用タイヤを製造しており、主力ブランドは「TOYO TIRES」。

  5. 横浜ゴム株式会社

    6. 主力ブランドは「ADVAN」や「BluEarth」などで、燃費性能に優れた低燃費タイヤを得意としています。

他にも、日本国内には多くのタイヤメーカーが存在しており、それぞれが特徴的な製品を開発・製造しています。

タイトルとURLをコピーしました