精穀製粉業の概要
精穀製粉業とは、穀物を製粉して食品加工や製菓製パンに必要な粉に加工する産業のことを指します。主に小麦、米、トウモロコシ、大豆などが使用されます。
精穀製粉業の流れは、原料となる穀物を受け取ってから、清掃や選別、洗浄、乾燥、粉砕、精製、検査などの工程を経て、製品として出荷されるまでの一連の流れです。
精穀製粉業においては、製品の品質管理が非常に重要です。粉の品質に影響する要素として、原料の品質や加工工程、機械のメンテナンスなどがあります。また、加工中に発生する粉塵は作業員の健康に悪影響を及ぼすため、安全管理にも配慮する必要があります。
現代においては、精穀製粉業においても自動化が進んでおり、高度な技術や機械が導入されることで、製品の品質向上や生産性の向上が図られています。また、近年ではグルテンフリー製品の需要の増加に伴い、小麦以外の穀物を原料とした粉の需要が拡大しています。
歴史
精穀製粉業は、穀物を粉に加工する産業で、その歴史は古代にまで遡ります。以下にその歴史の概要を説明します。
- 古代
- 中世
- 18-19世紀
- 20世紀
- 21世紀
人類が農耕を始め、穀物を食料とするようになったときから、穀物を粉にする技術が必要となりました。最初は石臼を使って手作業で穀物を粉にしたと考えられています。
中世ヨーロッパでは、水車や風車を使った製粉所が広まり、製粉の効率が向上しました。
産業革命に伴い、蒸気機関や電力を用いた大規模な製粉工場が設立されました。これにより、大量の穀物を効率的に粉に加工することが可能となりました。
20世紀に入ると、ローラーミル(ローラーを用いた製粉機)が開発され、精度と効率の高い製粉が可能となりました。また、製粉過程の自動化も進み、生産性が大幅に向上しました。
近年では、健康意識の高まりから全粒粉(全ての穀皮を含んだ粉)の需要が増えています。また、特定の食物に対するアレルギーや食事習慣の変化に対応した、さまざまな種類の穀物(米、とうもろこし、そばなど)から作られる粉も生産されています。
このような歴史的な変遷を経て、現在の精穀製粉業が形成されました。今後も、健康や食品安全への配慮、新たな技術開発が進むと考えられます。
日本の精穀製粉業について
日本の精穀製粉業界は、食品加工産業の中でも重要な産業の一つです。主に小麦粉、米粉、そば粉、うどん粉、パン粉、揚げ粉などの製品が生産されています。
日本においては、小麦粉はパン、ケーキ、クッキー、パスタなどの製品に広く使用されています。また、うどんやそばなどの麺類も、日本の伝統的な食文化に欠かせない食品の一つです。
近年、グルテンフリー製品の需要が増加しているため、小麦以外の穀物を原料とした粉の需要が増えています。また、健康志向の高まりに伴い、栄養価の高い穀物や無農薬の穀物を使用した製品の需要も増えています。
日本の精穀製粉業界は、先進的な技術や製品の品質管理を実践しています。また、独自の技術や品質基準を確立し、高品質な製品を供給することで、国内外で高い評価を得ています。
また、日本の精穀製粉業の歴史は、日本独特の食文化とともに発展してきました。以下にその主な歴史を時系列順に説明します。
- 古代・中世
- 江戸時代
- 明治時代
- 昭和時代
- 平成・令和時代
日本では古代から米が主食であり、米を直接炊いて食べる文化が主流でした。そのため、製粉業は小麦やそばなどの粉を主に製造する業種として発展しました。
この時期になると、都市部ではそばやうどんなどの麺類が広く食べられるようになり、それに伴い小麦やそばの製粉業が発展しました。
明治維新後の西洋化政策の影響で、パンや洋菓子の需要が増え、小麦粉の生産量が増加しました。また、洋式の製粉機械が導入され、製粉の効率が向上しました。
第二次世界大戦後、食糧難から政府がパンを推奨し、小麦粉の消費が増えました。また、自動化や機械化が進んだことで、製粉業の生産性が大幅に向上しました。
近年では、健康や栄養バランスを考慮した食生活の重視から、全粒粉や雑穀粉などの需要が増えています。また、特定の食物に対するアレルギーや食事習慣の変化に対応した、さまざまな種類の穀物(米、とうもろこし、そばなど)から作られる粉も生産されています。
主な製品
精穀製粉業の主な製品は以下の通りです。
【小麦粉】
パン、ケーキ、クッキー、パスタなどの製品に広く使用されています。
【米粉】
和菓子、洋菓子、麺類、調理パン、クッキーなどの製品に使用されます。
【そば粉】
そば麺やそばがき、そばパン、和菓子などの製品に使用されます。
【うどん粉】
うどん、そうめん、中華麺、洋風パスタなどの製品に使用されます。
【パン粉】
から揚げ、コロッケ、カツレツなどの衣や、パン粉焼き、フライなどの料理に使用されます。
【揚げ粉】
唐揚げ、天ぷら、フライなどの衣に使用されます。
【コーンスターチ】
とろみ付け、衣、洋菓子、和菓子、肉じゃがなどに使用されます。
【グルテンフリー粉】
小麦アレルギーの人やグルテンを避けたい人に向けた製品で、米粉、豆粉、キヌア粉、アマランサス粉、バナナ粉などを原料に使用します。
なお、地域によっては、大豆粉、あんこ粉、黒豆粉、かぼちゃ粉、さつまいも粉、芋粉など、独自の粉類が使用されることもあります。
製造工程
精穀製粉業の一般的な生産工程は以下の通りです。
- 受入
- 清掃・選別
- 水分調整
- 粉砕
- 粉塵回収
- 分級
- 濾過
- 加工
- 梱包
- 検査
- 出荷
原料の穀物を倉庫やタンクに受け入れます。
原料を清掃し、不純物や石などを取り除きます。また、種類や品質によっては選別機を使って分別することもあります。
原料の水分を均一にするため、必要に応じて水分を加えたり、除湿機で水分を取り除いたりします。
原料を粉砕機で砕いて粉末状にします。
粉砕時に発生した粉塵を回収し、環境への影響を軽減します。
粉末を適切なサイズに分類し、不要な物質を取り除きます。
粉末から不純物や異物を取り除くために、濾過機を使って濾過します。
必要に応じて、製品の品質や特性を向上させるために、加工を施します。例えば、小麦粉の場合は、グルテンの形成を促すために混練を行います。
製品を袋詰めや容器に充填し、梱包します。
製品の品質を確認するために、検査を行います。また、必要に応じて、微生物検査や放射能検査などを行うこともあります。
製品を出荷し、顧客に届けます。
以上が一般的な精穀製粉業の生産工程ですが、製品によっては、工程の順序や加工方法、使用する機械や設備などが異なる場合があります。
国内データ
以下は日本の精穀製粉業界に関する国内データです。
【精米量】
2019年度において、日本国内での精米量は約893万トンでした。
(出典:農林水産省「平成31年度産 穀類・いも類生産実績速報」)
【粉食品の生産量】
2020年度において、日本国内での粉食品(小麦粉、そば粉、うどん粉、米粉など)の生産量は約307万トンでした。
(出典:財務省「平成31年度産工業統計年報(詳細版)」)
【製粉業者数】
2021年現在、日本国内での製粉業者数は約320社です。
(出典:日本精米協会「日本の精米業界2021」)
【製粉業界の雇用情報】
2020年度において、製粉業界の雇用者数は約2,900人で、年間平均賃金は約456万円でした。
(出典:財務省「平成31年度産労働統計年報」)
【製品価格】
粉食品の価格は、原材料の価格や需要と供給のバランスなどによって変動しますが、小麦粉の平均価格は約4,000円/kg程度、そば粉の平均価格は約3,500円/kg程度であると推測されます。
(出典:各種スーパーのウェブサイトやオンラインショップなどにおける価格情報)
主な企業
日本には、大手から中小企業まで、多数の精穀製粉業者があります。以下はその中でも代表的な企業です。
- 日清製粉グループ
- マルハニチログループ
- 中央総業グループ
- ニチレイフーズ
- 丸正
小麦粉や米粉、そば粉、うどん粉などの製造・販売を手掛ける、日本を代表する精穀製粉業者です。代表ブランドに「きびなご」「養命酒ブランド」などがあります。
小麦粉やうどん粉、パンケーキミックスなどの製造・販売を手掛ける企業です。代表ブランドに「ホットケーキミックス」「うどんの花」などがあります。
そば粉や蕎麦めん、うどん粉などの製造・販売を手掛ける企業です。代表ブランドに「ながい蕎麦」「秋田蕎麦」などがあります。
小麦粉やパン粉、揚げ粉などの製造・販売を手掛ける企業です。代表ブランドに「日東パン粉」「フライングカンパニー」などがあります。
米粉、小麦粉、そば粉、うどん粉などの製造・販売を手掛ける企業です。代表ブランドに「丸正」「麦のここち」などがあります。