エラストマー

エラストマーは、弾性と復元力に優れた高分子材料の総称で、製造業において耐衝撃性・密封性・振動吸収などの機能を担う重要な素材です。ゴム系からシリコーン系、熱可塑性まで幅広いタイプがあり、産業機器、輸送機器、家電、医療機器などで幅広く活用されています。本記事では、エラストマーの基本特性、用途、選定時の要点、導入効果までをわかりやすく解説します。

エラストマーとは?基本特性と分類

  • ゴム弾性:大きな変形から戻る弾性を持つ高分子素材
  • 耐候性・耐薬品性:種類によって紫外線や油、化学薬品に強い
  • 熱伝導性:比較的低く、断熱用途にも適する
  • 分類:天然ゴム系(NR)、合成ゴム系(SBR、EPDM、NBR)、シリコーンゴム(Si)、熱可塑性エラストマー(TPE)など

製造業での主な用途と事例

  • シール・ガスケット:液体・気体の漏れ防止や密閉部品として
  • 振動吸収部品:エンジンマウント、機械ベースの防振パッド
  • 衝撃緩衝材:輸送緩衝材、スポーツ機器のクッション部品
  • ホース・チューブ:耐油・耐薬品仕様の配管材料
  • 接触部品:医療機器用グリップや食品機器の可動部パーツ

エラストマーの種類別 特性比較

種類 主な特性 代表的な用途
天然ゴム(NR) 伸びが大きく、優れた弾性。摩耗にはやや弱い ベルト、振動防止パッド、ショック吸収材
ニトリルゴム(NBR) 耐油性・耐燃料性に強く、機械油に対応 オイルシール、燃料ホース、油圧配管
エチレンプロピレンゴム(EPDM) 耐候・耐熱・耐水性に優れる 外部パッキン、建材用シール、防水部品
シリコーンゴム(Si) 耐熱および極低温特性。生体適合性も高い 医療用部品、電子部品用シール、食品機器パーツ
熱可塑性エラストマー(TPE) 多様な硬度・接着性。射出成形対応 成形グリップ、ガスケット、靴底部材

導入メリットと製造上の利点

  • 優れた弾性により、機械への衝撃・振動負荷を緩和し耐久性を向上
  • 用途に応じた材料選定で耐薬品性・耐熱性・耐候性を実現
  • 加工性がよく、射出成形や押出成形などによる大量生産にも対応可能
  • リサイクル性が高く、熱可塑性タイプは再利用・再成形も可能

選定時のチェックポイント

  • 使用環境条件:温度範囲、化学薬品・油との接触、紫外線曝露など
  • 硬度と弾性:ショア硬度と伸び特性のバランス
  • 安全性・規格対応:耐燃性、食品接触適合、医療認証など
  • 成形方法・加工設備:射出、押出、圧縮成形への適合性
  • ライフサイクル評価:耐候性、加工寿命、メンテナンス性

改善手法と品質向上策

  • 添加剤やフィラー添加による耐候性・滑り性の向上
  • コーティングや複合成形による複数機能の付与
  • 最適冷却・金型設計の見直しによる成形精度向上
  • 品質検査装置の導入(硬度測定、寸法・外観検査)

導入事例

産業用機械メーカーE社

EPDMパッキンにより防水性と耐候性を向上し、屋外作業機器の耐久性が40%改善されました。

医療機器メーカーF社

シリコーン材料の注射器グリップユニットを採用し、クリーンルーム対応と生体適合性での信頼性を確保しました。

搬送装置メーカーG社

TPE製クッションベルトで、組立ライン装置の振動と騒音を抑え、作業安全性が向上しました。

よくある質問(FAQ)

Q1: エラストマーはゴムと同じですか?
A1: 一般にはゴムの仲間ですが、熱可塑性タイプや加工性に違いがあり、ゴムと区別されて使われます。
Q2: 高温環境でも使えますか?
A2: シリコーンゴムは200℃以上にも対応可能。一方、NBRやEPDMは用途により制限があります。
Q3: 食品機器にも安全に使えますか?
A3: 食品接触適合グレードのシリコーンやTPEは利用可能です。ただし材料証明や試験確認が必要です。
Q4: リサイクルはどう行える?
A4: TPEは熱可塑性なのでリサイクル可能ですが、NRやNBRなどの熱硬化性ゴムは難しい場合があります。
Q5: どの硬度を選べばよいですか?
A5: シール用途では柔らかい(ショア20~40)、振動用途ではやや硬め(ショア60~80)が基準となります。

まとめ

エラストマーは、製造業における応用範囲が広く、多様な機能性を持つ重要材料です。適切な種類と加工法を選ぶことで、耐久性、快適性、安全性を両立した製品開発が可能になります。温度・薬液・環境条件に応じた材料選定と品質管理を徹底することで、信頼性の高い生産体制を構築できます。

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