カメルヘア

カメルヘアとは

カメルヘアは、主にフタコブラクダ(バクトリアンキャメル)の冬毛から得られる天然繊維です。寒暖差の大きい乾燥地帯で暮らすラクダの体毛は、外毛(ガードヘア)と内毛(アンダーコート)で役割が分かれており、衣料用として価値が高いのは柔らかいアンダーコートです。軽さと保温性、蒸れにくさをバランス良く備え、ウールやカシミヤと並ぶ高級獣毛素材として扱われます。

なお「キャメル」という表記は色名としても使われるため、製品表示では「繊維としてのキャメル(ラクダ毛)」か、単なる色名かを見分けることが重要です。

原材料の種類

  • アンダーコート(内毛):細く柔らかく、保温性が高い。コート、ストール、毛布などに向く。
  • ガードヘア(外毛):太く硬めで、耐摩耗性はあるが肌触りは粗くなりやすい。カーペット、芯地、工業資材向けの混用などで使われることがある。

原料としてはアンダーコート比率が品質と価格を左右します。一般に、細さ(ミクロン値)、毛長、異物混入、外毛混入率が重要な評価軸になります。

採取方法と生産工程

カメルヘアは「春先の換毛期」に採取されることが多く、動物福祉の観点からも、自然に抜ける毛を櫛ですき取る方法が中心です。代表的な工程は以下のとおりです。

  1. 採毛:換毛期にコーミングで採取(地域・運用により一部剪毛の場合もある)
  2. 洗浄:砂や植物片などの異物、皮脂を除去
  3. 選別:外毛の除去、色・太さ・毛長のグレーディング
  4. カード・コーミング:繊維方向を整え、均一化
  5. 紡績:梳毛糸・紡毛糸など用途に応じて設計
  6. 製織・編立:織物(コート地、毛布)やニット(ストールなど)に加工
  7. 整理加工:起毛、縮絨、プレス、毛羽抑制などで風合いと寸法安定性を調整

カメルヘアの特徴

  • 高い保温性:繊維が空気層をつくりやすく、防寒性に優れる
  • 軽量感:同じ厚みでも着用時の重さを抑えやすい
  • 吸放湿性と通気性:湿気がこもりにくく、蒸れを抑えやすい
  • しなやかな風合い:アンダーコート主体の場合、滑らかで上品な触感になりやすい
  • 天然の色調:染色せずに活かせるベージュ〜ブラウン系の色味が多い

物性の目安(設計・選定に使うポイント)

獣毛繊維は個体・産地・選別条件で幅が出るため、数値は目安として扱うのが安全です。設計では「繊維の細さ」「外毛混入率」「糸設計(紡毛/梳毛、撚り)」「整理加工」で最終性能が決まります。

項目 目安 実務での見方
繊維の細さ アンダーコートは概ね細め(用途により幅) 肌触り・チクチク感に影響。高級衣料ほど細さと外毛混入率が重要
毛長 中程度〜やや長め(ロット差あり) 紡績歩留まり、毛羽、耐久性に影響
ナチュラルブラウン系が中心 無染色提案がしやすい。色ブレはロット管理が必要
耐久性 用途設計次第で良好 コート地・毛布などで長期使用に向く。ピリングは糸設計と整理で抑制

用途

カメルヘアは高級衣料だけでなく、製造業の素材選定(繊維設計、製品企画、資材調達)の観点でも扱われます。

  • 衣料:コート、ジャケット、スーツ地、ストール、マフラー、帽子
  • 寝具・インテリア:毛布、ブランケット、クッション、室内用ファブリック
  • 資材用途:フェルト、芯地、保温材用途の混紡素材(仕様により)

価格・コストの考え方

カメルヘアは供給量が限られ、さらに衣料向けに適するアンダーコートは選別工程が増えるため、原料価格は上がりやすい傾向があります。コストを左右する主因は以下です。

  • アンダーコート比率と外毛混入率
  • 繊維の細さ・毛長・色の均一性
  • 洗浄・選別の手間、紡績歩留まり
  • 品質保証(試験頻度、ロット管理、トレーサビリティ)

製品設計では、カメルヘア100%に限定せず、ウール混、シルク混などで狙いの風合い・耐久性・価格帯を調整するケースも一般的です。

生産地・サプライチェーンの特徴

原毛の主要産地は、乾燥地帯の牧畜地域(中国、モンゴル、中央アジア周辺)に集中する傾向があります。最終製品は、紡績・織編・整理加工の集積地で付加価値化されるため、原料産地と製造拠点が分かれることも多い素材です。

調達では、原毛のグレーディング基準、混入管理(外毛・異物)、ロット安定、取引証憑(動物由来の説明、産地情報)を確認しておくと、クレームや色ブレを抑えやすくなります。

環境負荷・倫理調達のポイント

  • 放牧地の管理:過放牧は草地劣化の要因になり得るため、調達先の放牧管理方針を確認する
  • 動物福祉:換毛期のコーミング中心か、負担の大きい採取をしていないかを確認する
  • 長寿命設計:耐用年数が長い製品に適し、リユース・リペアと相性が良い

繊維としての再生(繊維リサイクル)は、混紡率や染色、整理加工の影響で難度が上がる場合があります。現実的には、回収設計や修理対応など、長く使う仕組みづくりが効果的です。

品質管理・試験項目(製造業向け)

カメルヘアは天然素材のため、品質のばらつきを前提に管理設計を行います。代表的な確認項目は次のとおりです。

  • 繊維の細さ(ミクロン値)と分布
  • 外毛混入率、異物混入(砂、植物片)
  • 毛長、短繊維率
  • 色差(ロット間の色ブレ)
  • 糸の均一性、毛羽、撚り
  • 織編物の寸法安定性、ピリング、摩耗、洗濯・ドライ耐性

設計・加工での注意点

  • チクチク感対策:アンダーコート比率の確保、外毛混入の抑制、裏地や編み設計で肌当たりを調整
  • 毛羽・ピリング:糸設計(撚り、番手)、整理加工、摩擦条件を想定した試験で詰める
  • 洗濯表示:水洗いで縮みや風合い変化が出やすい仕様もあるため、用途に応じてドライ推奨や試験裏付けを用意
  • 色ブレ:無染色提案は魅力だが、ロットで色が揺れるためロット管理と配反計画が重要

よくある質問(Q&A)

Q1. カメルヘアは「ラクダ毛」と同じ意味ですか?
A1. 一般にはラクダ由来の獣毛を指しますが、実務ではフタコブラクダの冬毛(アンダーコート)を指して「カメルヘア」と呼ぶことが多いです。表示や仕様書では動物種と混用率を確認すると確実です。
Q2. カメルヘアはカシミヤより安い素材ですか?
A2. 一概には言えません。原料のグレード(細さ、外毛混入率、色の均一性)や加工条件で価格は大きく変わります。高グレードのアンダーコート主体の素材は高価格帯になりやすいです。
Q3. コート地でカメルヘアが選ばれる理由は何ですか?
A3. 保温性と軽さのバランス、上品な風合い、天然の色味を活かしやすい点が理由です。ウール混にすることで、耐久性やコストを調整しながら狙いの風合いに寄せられます。
Q4. 取り扱い(洗濯)で注意する点はありますか?
A4. 仕様によっては水洗いで縮みや風合い変化が出やすいため、まずは製品の洗濯表示に従うことが基本です。製造側では、用途想定に合わせて洗濯・ドライ試験で寸法安定性と外観変化を確認すると安心です。
Q5. 調達時に最低限チェックすべき品質項目は何ですか?
A5. 外毛混入率、異物混入、色差(ロット差)、繊維の細さ(ミクロン値)の4点が重要です。加えて、用途に応じて毛長、短繊維率、ピリングや摩耗の評価も行うとトラブルを減らせます。

タイトルとURLをコピーしました