工場立地件数の推移と人気地域ランキング【最新統計データ付き】
本記事では、経済産業省「工場立地動向調査(2024年:1月〜12月)」の公表資料をもとに、全国の工場立地件数の動きと、都道府県別の立地件数ランキングを整理します。製造業の拠点戦略(サプライチェーン再構築、脱炭素、スマートファクトリー化)を検討するうえで、立地データをどう読み解けばよいかもあわせて解説します。
工場立地動向調査の対象範囲
本調査の「工場立地件数」は、工場立地法に基づく施策検討のために集計される統計で、対象は製造業に加え、電気業・ガス業・熱供給業、関連分野の研究所などです。集計上の「工場立地件数」には研究所を除外し、2024年(1月〜12月)に1,000㎡以上の用地(借地を含む)を取得した事業者が対象です。
全国の工場立地件数と面積の最新結果(2024年)
2024年は、工場立地件数・立地面積ともに前年を上回りました。件数は「近年800件前後で推移」という水準感の中で増加しています。
| 指標 | 2024年 | 前年差 | 前年差率 |
|---|---|---|---|
| 工場立地件数 | 854件 | +55件 | +6.9% |
| 工場立地面積 | 1,982ha | +438ha | +28.4% |
| 平均立地面積 | 2.32ha | +0.40ha | +20.2% |
件数だけでなく、面積が大きく伸びている点が2024年の特徴です。大規模立地(2ha以上)が総面積の大部分を占める傾向も示されています。
工場立地件数のトレンドをどう読むか
工場立地は景気局面の影響を受けやすい一方で、近年は以下の要因が「立地の質」を変えています。
- サプライチェーンの再構築(調達分散、BCP強化、在庫最適化)
- エネルギー制約の顕在化(電力容量、系統制約、再エネ調達、熱源転換)
- 省人化・自動化の進展(省人ライン、遠隔監視、データ連携を前提にした工場設計)
- 大規模投資の増加(面積増が示す通り、拡張余地やインフラ余力の重要性が上昇)
都道府県別 工場立地件数ランキング【2024年】
2024年の上位は、用地確保・高速道路網・産業集積・誘致施策などの条件を備える県が並びます。ここでは公表資料に掲載されている上位10都道府県を整理します。
| 順位 | 都道府県 | 立地件数(件) | 全国シェア(概算) |
|---|---|---|---|
| 1位 | 茨城県 | 73 | 約8.6% |
| 2位 | 愛知県 | 67 | 約7.8% |
| 3位 | 岐阜県 | 49 | 約5.7% |
| 4位 | 兵庫県 | 47 | 約5.5% |
| 5位 | 静岡県 | 46 | 約5.4% |
| 6位 | 奈良県 | 46 | 約5.4% |
| 7位 | 埼玉県 | 40 | 約4.7% |
| 8位 | 群馬県 | 38 | 約4.4% |
| 9位 | 千葉県 | 30 | 約3.5% |
| 10位 | 福岡県 | 26 | 約3.0% |
上位県は「首都圏〜東海の製造集積」および「西日本の広域物流・産業基盤」を背景に、拠点新設・増設の両面で選ばれやすい構造があります。
立地が集中する地域に共通する条件
ランキング上位に入りやすい地域には、次のような共通点が見られます。
- 工業用地の供給力:まとまった区画、拡張余地、造成の進捗
- 交通インフラ:高速ICへの近接、幹線道路の接続、港湾・空港との連携
- ユーティリティ余力:電力容量、特高受電の可否、工業用水、排水処理
- 人材の確保:周辺人口、工業高校・高専・大学、技能人材の集積
- 支援制度:補助金、税制優遇、設備投資支援、ワンストップ窓口
工場立地の意思決定で見落としやすいチェック項目
立地件数の多い地域は候補になりやすい一方で、実務では「工場を建てられるか」だけでなく「運用できるか」を詰める必要があります。
インフラと運用コスト
- 電力:受電方式(高圧/特高)、増設までの期間、ピーク抑制(デマンド)
- 用水・排水:必要水量、水質条件、放流規制、前処理設備の要否
- 通信:回線冗長化、工場LAN、OTセキュリティの前提
リスクとBCP
- 地震・液状化・浸水:ハザードマップと設備配置(電気室・受変電の高さ)
- サプライヤ分散:主要部材の調達距離、代替輸送ルート
- 停止損失:操業停止の影響額から逆算した冗長化投資
スマートファクトリー化が立地戦略を変える
IoT・自動化が進むほど、立地は「人が集まる場所」だけでなく「設備を安定稼働させる条件」で選ばれます。具体的には、次のような方向性が強まります。
- 省人化前提:少人数でも回るライン設計と保全体制
- エネルギー最適化:再エネ調達、熱源転換、ピークカットを設計段階から織り込む
- 多拠点運用:遠隔監視・標準化により、地方分散でも品質と生産性を揃える
まとめ
- 2024年の工場立地件数は854件で、前年から+6.9%増加
- 立地面積は1,982haと伸長し、大規模投資の存在感が増している
- 2024年の上位は茨城、愛知、岐阜、兵庫、静岡など
- 立地選定は「用地」だけでなく「電力・用水・災害・人材・制度」を総合評価するのが実務的
よくある質問(FAQ)
Q1. 工場立地動向調査の「工場立地件数」は何を数えていますか?
A. 製造業などの工場・研究所を建設する目的で、対象年に1,000㎡以上の用地(借地を含む)を取得した事業者を集計した件数です。工場立地件数の集計では研究所を除外して扱います。
Q2. 2024年の工場立地件数は増えたのに、なぜ面積が大きく伸びたのですか?
A. 2024年は立地面積が前年より+28.4%増加しており、相対的に大規模な立地(2ha以上)や面積の大きい投資が増えた影響が示唆されます。件数と面積は必ずしも同じ動きをしません。
Q3. 都道府県ランキングの上位県は、なぜ選ばれやすいのですか?
A. 工業用地の供給力、高速道路などの交通網、産業集積、支援制度の充実、電力・用水などユーティリティ条件が整っている地域は、拠点新設・増設の意思決定が進みやすい傾向があります。
Q4. 立地件数が多い県を選べば、工場計画は成功しやすいですか?
A. 候補地として有力になりやすい一方で、成功は別問題です。受電容量、排水・騒音などの規制、災害リスク、人材確保、物流条件、操業後の運用コストまで含めて比較することが重要です。
Q5. スマートファクトリー化は立地条件をどう変えますか?
A. 省人化・遠隔監視が進むほど、通信・電力の安定性、保全体制、サイバーセキュリティなどの条件が重要になります。「人を集めやすい場所」だけでなく「設備を止めないための条件」で立地を評価する企業が増えています。

