神奈川県の製造業データまとめ(産業構造・強み・注目分野)
神奈川県は、京浜臨海部の素材・エネルギー・重電などの大規模拠点と、県央〜湘南〜西湘の精密加工・電機・自動車関連・医療ヘルスケアなどが共存する、全国有数の製造業集積地です。港湾・空港・高速道路網に近い立地に加え、研究開発拠点の厚みがあることから、「都市型の高付加価値ものづくり」として強みを発揮しやすい地域です。
神奈川県における製造業の基本データ(2021年の位置づけ)
公表統計(経済センサス・工業統計など)で見ると、神奈川県の製造業は事業所数・従業者数・出荷額・付加価値の観点で全国上位に位置づけられます。とくに輸送用機械、電機・電子、化学・素材などが県内の産業規模を支えています。
| 指標 | 神奈川県(2021年の概況) | 読み解きポイント |
|---|---|---|
| 製造業事業所数 | 中小企業を中心に幅広い業種が分布 | 多品種少量・受託加工・試作対応の厚みにつながる |
| 従業者数 | 大規模拠点と中小の集積が共存 | 量産・研究開発・保全・品質保証など職種が多様 |
| 製造品出荷額等 | 全国上位(輸送用機械、電機・電子、化学などが牽引) | 完成品・装置・素材の組み合わせで変動要因が複線化 |
| 付加価値額 | 全国上位(研究開発型・高付加価値の比重が高い) | 設計・評価・サービス連携で上がりやすい |
データ出典例:総務省 経済センサス-活動調査(令和3年)、経済産業省 工業統計調査(公表資料)など
業種別の特徴(事業所の多さと出荷額の大きさは一致しない)
製造業データは「事業所数が多い業種」と「出荷額が大きい業種」が一致しないことがよくあります。神奈川県でも、受託加工・部品加工は事業所が多く、完成品や大型設備・素材系は出荷額が大きい、という構図が起こりやすいのが特徴です。
- 事業所数が多い傾向:金属加工、機械、電機・電子、樹脂加工、食品など
- 出荷額が大きい傾向:輸送用機械(自動車・部品)、電機・電子、化学・素材、エネルギー関連など
主要な集積エリアと役割(臨海×内陸の二層構造)
神奈川県の製造業は、大きく「臨海部」と「内陸部」で強みが分かれます。臨海部は大規模プラント・港湾物流に適し、内陸部は研究開発・試作・精密加工や多品種少量の量産準備に適した構造になりやすい点がポイントです。
| エリア | 主な強み | 代表的な領域 |
|---|---|---|
| 川崎・横浜(臨海部) | 港湾・大型設備・素材供給、広域物流 | 化学・素材、エネルギー、重電、物流・加工 |
| 県央(相模原・厚木・海老名周辺) | 研究開発〜量産準備、工程設計・生産技術 | 電機・機械、自動車関連、精密加工 |
| 湘南〜西湘(藤沢・平塚・小田原周辺) | 多様な中堅・中小の集積、医療・機械の裾野 | 機械・化学、医療・計測、食品など |
| 横須賀(追浜・研究拠点周辺) | モビリティ・通信系の研究開発色が出やすい | 自動車、無線・通信関連 |
サプライチェーン構造(神奈川県の“強いところ”)
- 川上(素材・エネルギー):臨海部の大型設備と相性が良く、港湾近接で調達・輸出入の選択肢が増える
- 川中(試作〜小量産):県央・湘南の精密加工、工程設計、生産技術の蓄積が競争力になりやすい
- 川下(保守・サービス):首都圏需要と近く、短納期対応・フィールドサービス連携がしやすい
研究開発・人材・連携(都市型ものづくりの土台)
神奈川県は、企業の研究所や実証拠点が集まりやすい立地に加え、大学・公設試験研究機関などの支援を活かしやすい点が特徴です。一方で、製造現場では設備保全、品質保証、制御・ソフト、セキュリティなどの人材不足が課題になりやすく、育成と採用の両面が重要になります。
- 人材面の論点:技能継承、品質保証の標準化、設備保全の高度化、データ活用人材の確保
- 連携の論点:産学連携、スタートアップとの共同実証、サプライヤ横断のデータ連携
DX・自動化の進展と課題(投資対効果の見える化が鍵)
県内では、IoT・AI・ロボティクスなどの導入機会が増えていますが、成果が出る企業は「現場KPI」「データ定義」「運用設計」をセットで作り、段階導入でスケールさせています。
| テーマ | 狙い | 現場で起きやすい課題 |
|---|---|---|
| 予防保全 | 突発停止の削減、保全工数の最適化 | センサー設置の標準化、異常判定の閾値設計 |
| トレーサビリティ | 品質問題の原因特定、回収範囲の最小化 | 現場入力の負荷、マスタ不整合、データ欠損 |
| 生産計画の高度化 | リードタイム短縮、在庫の適正化 | 制約条件の整理不足、例外処理の属人化 |
脱炭素・省エネ(製造現場の実務は“原単位”から始める)
脱炭素は設備更新だけでなく、運用改善でも成果が出やすい領域です。エネルギー原単位を工程別に分解し、改善余地の大きい工程から手を付けると、投資の優先順位がつけやすくなります。
- 取り組み例:省エネ診断、設備の高効率化、ピークカット、空調・コンプレッサの最適制御
- KPI例:kWh/生産数量、kWh/売上、CO2/製品、ピーク電力、稼働率あたりエネルギー
立地・BCP(災害リスクをデータで扱う)
神奈川県は、地震・水害・高潮などのリスク評価とBCPが重要です。製造業では「設備固定」「代替調達」「電源・通信の冗長化」「データバックアップ」を具体策に落とし込み、年1回以上の訓練で実効性を確保することが推奨されます。
データを意思決定に使うコツ(自治体・企業どちらでも有効)
- 比較軸を揃える:年次、産業分類、対象(事業所・企業・従業者)の定義を揃える
- 指標を分解する:出荷額だけでなく、付加価値、人時生産性、在庫回転、品質ロスなども併用
- 地図で見る:集積エリア、物流動線、通勤圏、災害リスクを重ねて判断する
よくある質問(Q&A)
Q1. 神奈川県の製造業は何が強いですか?
A. 臨海部の素材・エネルギー・大型設備と、内陸部の精密加工・電機・自動車関連・医療などが共存し、研究開発から量産準備までの対応力を作りやすい点が強みです。
Q2. 事業所数が多い業種と、出荷額が大きい業種が違うのはなぜですか?
A. 受託加工や部品加工は中小事業所が多く事業所数が増えやすい一方、完成品や素材・大型装置は少数の大規模拠点でも出荷額が大きくなりやすいためです。
Q3. 神奈川県で工場・拠点を検討する際の立地の見方は?
A. 物流(港・空港・高速IC)、人材確保(通勤圏・賃金水準)、取引先の分布、用地制約、そして災害リスクを同じ粒度で比較するのがコツです。
Q4. 製造業データでまず押さえるべき指標は何ですか?
A. 事業所数・従業者数・出荷額・付加価値に加えて、可能なら労働生産性、設備稼働、品質ロス、在庫回転、エネルギー原単位まで見ると、実務の改善テーマにつながります。
Q5. 神奈川県の製造業DXで起きやすい課題は?
A. データ定義の不統一、既存システムのサイロ化、現場入力負荷、投資対効果の見える化不足が起きやすいです。現場KPIと運用設計をセットで作ることが有効です。
Q6. 研究開発型の集積があると何が良いのですか?
A. 試作・評価・工程設計のスピードが上がりやすく、製品企画から量産立ち上げまでのリードタイム短縮や高付加価値化につながります。
Q7. 脱炭素は何から始めるのが現実的ですか?
A. 工程別のエネルギー原単位を見える化し、ロスが大きい工程から運用改善と設備改善を組み合わせる方法が現実的です。

