茶製造業とは、茶樹(チャ)の生葉を原料に、蒸熱・揉捻・乾燥・発酵(酸化)などの加工を行い、緑茶・紅茶・烏龍茶・抹茶などの製品として出荷する産業です。製造品質は、原料(品種・摘採時期)と加工条件(温度・時間・水分)の管理で決まり、農業(栽培)と食品製造(加工)の両方の視点が必要になります。
茶製造業の概要
茶製造業は、主に「産地で生葉を荒茶(一次加工)にする工程」と「仕上げ・ブレンド・小分け包装などの再製工程」に分かれます。産地側で鮮度の高い生葉を迅速に加工し、流通・販売側で味や香りを整え、用途別(急須用、ティーバッグ用、抹茶原料など)に最適化するのが一般的です。
- 主な事業形態:自園自製(栽培から製造まで)、買葉製造(生葉を購入して製造)、再製・仕上げ(荒茶を仕入れて製品化)
- 主な収益源:茶葉製品の販売、OEM供給、業務用原料供給、体験・観光(茶工場見学等)
茶製造業の仕組み
茶の種類は、同じ茶葉でも「酸化(発酵)の度合い」と「乾燥・加熱の工程設計」で分かれます。つまり、製造業としての茶づくりは、工程条件を標準化し、水分と温度を管理して狙いの香味を再現する仕事です。
- 緑茶:酸化を止める(蒸熱など)→揉む→乾燥
- 烏龍茶:部分的に酸化させる→加熱で止める→揉む→乾燥
- 紅茶:しっかり酸化させる→乾燥
- 黒茶(後発酵茶):微生物発酵などを含む工程設計が必要
主な製品
茶製造業の製品は、用途(飲用、菓子・飲料原料、業務用)と加工形態(リーフ、粉末、ティーバッグ)で幅広く展開されます。製品ごとに求められる粒度・色・香りが異なるため、仕上げ工程の設計が重要です。
- 煎茶:日本の主力。蒸熱後に揉捻・乾燥し、香りと旨みのバランスを作る
- 玉露・かぶせ茶:被覆栽培由来の旨みが特徴。荒茶品質と保管管理が差になる
- 抹茶(てん茶原料):被覆した葉を揉まずに乾燥して「てん茶」にし、粉砕して粉末化
- ほうじ茶:焙煎により香ばしさを付与。焙煎条件が品質を左右
- 烏龍茶・紅茶:酸化(発酵)工程の温湿度・時間管理が肝
- ティーバッグ・粉末茶:抽出性、粒度、異物管理、充填精度が重要
製造工程
茶の製造工程は、製品タイプにより工程と管理点が変わります。ここでは現場での理解が早いように、共通工程と代表的な違いを整理します。
共通工程(多くの茶に共通)
- 摘採:若芽中心に収穫し、異物混入を防いで速やかに搬送する
- 受入・選別:鮮度、葉の状態、異物の有無を確認し、ロット管理する
- 一次加工:蒸熱・萎凋・揉捻など、製品に合わせた工程を実施する
- 乾燥:水分を安定させ、保存性と香味を整える
- 仕上げ(再製):火入れ、選別、ブレンド、粒度調整、小分け包装を行う
- 保管・出荷:温度・湿度・光・臭い移りを管理し、品質劣化を防ぐ
製品別の違い(代表例)
- 緑茶:蒸熱で酸化を止める→揉捻→乾燥→仕上げ
- 紅茶:萎凋→揉捻→酸化(発酵)→乾燥→仕上げ
- 烏龍茶:萎凋→部分酸化(発酵)→加熱で止める→揉捻→乾燥
- 抹茶:てん茶製造(揉まない乾燥)→粉砕→ふるい・金属検出→包装
品質管理のポイント
茶の品質は、香味だけでなく食品としての安全性で信頼が決まります。製造業としては「異物混入防止」「残留農薬など規制対応」「ロット追跡」の3点を仕組みで担保することが重要です。
- 異物管理:原料受入、ふるい、風選、金属検出、目視検査の多層化
- 水分管理:乾燥終点のばらつきはカビ・劣化リスクにつながるため測定を標準化
- ロット管理:生葉ロットと製造条件、仕上げ・ブレンド履歴を紐付けて追跡可能にする
- 臭い移り対策:保管区画の分離、梱包材選定、清掃手順の標準化
法規制・認証・輸出で押さえるべき点
茶は食品として扱われるため、衛生管理の基本(清掃、異物、表示、トレーサビリティ)を前提に、輸出では相手国の残留農薬基準などの要求に合わせた管理が必要です。特に輸出は「国内基準を満たしている」だけでは不十分な場合があります。
- 衛生管理:製造環境の区画、洗浄・清掃の標準化、記録の保存
- 表示対応:原材料名、内容量、保存方法、賞味期限、アレルゲン等(製品形態に応じて)
- 輸出対応:相手国の残留農薬基準や輸入条件に合わせた栽培・調達と検査設計
- 有機:有機JASなど認証に応じた区分管理と記録管理が必要
主要設備と選定基準
茶の設備は、狙いの香味と生産性を同時に作るための「工程条件の再現装置」です。選定では、処理量だけでなく、温度・風量・時間の制御性と清掃性を重視すると失敗が減ります。
- 一次加工:蒸機、萎凋設備、揉捻機、乾燥機、火入れ機
- 仕上げ:選別機、切断・粒度調整、ブレンダー、計量充填、包装機
- 安全:金属検出機、X線検査(必要に応じて)、集塵設備
- 選定基準:狙いの香味を再現できる制御性、清掃・分解のしやすさ、粉塵対策、保守体制、将来の増産余力
国内動向とデータ
国内の茶産業は、産地の荒茶加工から消費地の仕上げ・ブレンドまで分業構造が基本です。近年は生産構造の変化とともに、抹茶・粉末茶など海外需要が強い領域の重要度が増しています。
- 産業規模の目安:荒茶段階での産業規模(産出額)などが公表されている
- 主要産地:栽培面積は静岡、鹿児島などが上位で推移
- 最近のトピック:統計上、鹿児島が荒茶生産量で首位となった年がある
世界の茶製造業の概況
世界の茶市場は、生産国と消費国が分かれる構造が特徴です。生産は中国とインドの比率が大きく、国際貿易では紅茶系(黒茶含む)の輸出が強い国も多い一方、日本は緑茶・抹茶など差別化領域での競争が中心になります。
- 主要生産国:世界全体では中国が最大級の生産国で、次いでインドなどが続く
- 競争軸:価格競争(汎用品)と、産地・製法・安全性・ストーリーでの付加価値競争(差別化品)に二極化しやすい
- 成長領域:粉末茶・抹茶、RTD(ペットボトル等)原料、機能性・プレミアム帯
主な企業(例)
茶製造業は、中小の産地事業者が多い一方で、飲料・流通・OEMなど周辺産業も含めてバリューチェーンが広いのが特徴です。ここでは事業類型別に代表例を挙げます(取り扱い範囲は企業により異なります)。
- 飲料・ブランド展開:伊藤園など(茶飲料・茶葉商品を広く展開)
- 茶のOEM・加工:丸七製茶など(業務用・OEM供給を含む)
- 産地系の加工・販売:宇治茶など地域ブランドの加工・販売事業者(例:山城物産)
茶製造業の課題と今後の打ち手
茶製造業は、原料調達の不安定化、担い手不足、品質要求の高度化、輸出規制対応など課題が複合します。打ち手は「標準化」「データ化」「高付加価値化」の3本柱で設計すると整理しやすくなります。
- 標準化:作業標準書で工程条件・検査・清掃を統一し、品質を安定させる
- データ化:ロット、温度・時間、水分、歩留まりを記録して改善(歩留まりとクレーム低減に直結)
- 高付加価値化:抹茶・粉末茶、シングルオリジン、ブレンド設計、ギフト・業務用提案など
- 輸出対応:相手国規制を前提に調達・栽培・検査を組み直す
よくある質問(Q&A)
Q. 茶製造業は「荒茶」と「仕上げ茶」で何が違いますか?
A. 荒茶は、産地で生葉を蒸熱・揉捻・乾燥などで一次加工した段階の茶で、仕上げ茶は荒茶を選別・火入れ・ブレンド・小分けして商品に仕立てたものです。荒茶は原料品質と一次加工条件が勝負で、仕上げ茶は味づくりと規格・包装設計が差になります。
Q. 緑茶と紅茶の製造工程で一番大きな違いは何ですか?
A. 最大の違いは酸化(発酵)を止めるか進めるかです。緑茶は蒸熱などで酸化を止めて青い香りと旨みを残し、紅茶は萎凋・揉捻後に酸化を進めて香りと水色、コクを作ります。工程条件(温湿度・時間)の管理が品質を左右します。
Q. 工場で優先すべき品質管理は何ですか?
A. まずは異物混入防止とロット追跡を仕組み化するのが効果的です。受入時の確認、ふるい・金属検出などの多層防御、清掃手順の標準化、そしてロットと製造条件の記録を揃えると、クレーム対応と品質改善が早くなります。
Q. 抹茶(粉末茶)を製造するときの注意点は?
A. 粉末は粒度と異物管理が品質を大きく左右します。粉砕工程での金属摩耗対策、ふるい・金属検出の強化、吸湿と臭い移りを防ぐ包装設計が重要です。また、用途(飲用、菓子、飲料原料)で求められる色味や粒度が異なるため、規格を先に定義して工程を合わせます。
Q. 輸出を考える場合、国内販売と何が違いますか?
A. 相手国・地域の残留農薬基準や輸入条件に合わせた調達・検査設計が必要になる点が大きな違いです。国内基準を満たしていても、相手国の基準がより厳しい場合があります。輸出先を決めたうえで、原料調達と管理項目を逆算して整備すると進めやすくなります。


