プラ・合成皮革製造業の概要
プラ・合成皮革製造業とは、合成樹脂を原料として、本物の皮革に似せた人工皮革を製造する産業のことです。プラスチック素材であるPVC(ポリ塩化ビニール)やPU(ポリウレタン)などを使用して、様々な種類の合成皮革を生産します。
合成皮革は、本物の皮革よりも安価であり、柔軟性や耐久性にも優れているため、多くの製品に使用されています。主に、衣料品、バッグ、靴、車のシートや内装材、家具などの製造に用いられています。
ただし、プラ・合成皮革は、素材の特性上、環境への影響やリサイクルの難しさなどの問題も指摘されています。最近では、環境負荷の低減やリサイクル技術の開発などが進められています。
日本のプラ・合成皮革製造業について
日本のプラ・合成皮革製造業界は、世界的にも有名であり、多くの企業が参入しています。日本は、合成皮革製造に必要な技術や素材の供給基盤が整備されていることから、高品質な合成皮革製品を生産しています。
代表的な企業としては、三菱化成、旭化成、東洋紡、日本合成皮革、ニチベイ、栗田工業、三共などがあります。これらの企業は、衣料品、バッグ、靴、車両用シートや内装材、家具などの製造に使用される合成皮革を生産しています。
また、日本のプラ・合成皮革製造業界は、環境に配慮した製造技術の開発にも力を入れており、リサイクル技術の開発や、環境負荷の低減に向けた取り組みが進められています。さらに、近年では、合成皮革に天然素材を混合することで、環境への負荷を抑えた製品も生産されるようになっています。
主な製品
プラ・合成皮革製造業の主な製品は以下のようなものがあります。
【衣料品】
コート、ジャケット、スカート、パンツ、手袋、帽子など。
【バッグ】
ハンドバッグ、トートバッグ、リュックサック、ショルダーバッグ、クラッチバッグなど。
【靴】
スニーカー、ブーツ、サンダル、パンプス、ローファーなど。
【車両用シートや内装材】
自動車、バス、トラックなどのシートや、ダッシュボード、ドアパネル、ステアリングホイールカバー、コンソールボックスなど。
【家具】
ソファ、チェア、ベッド、クッション、マットなど。
これらの製品は、本物の皮革製品に比べて安価であり、柔軟性や耐久性に優れているため、多くの消費者に支持されています。また、合成皮革製品は、本物の皮革製品よりも汚れが落ちやすく、メンテナンスが簡単であるため、普段使いに適しています。
製造工程
プラ・合成皮革製造業の製造工程は以下のようになります。
- 原材料の準備
- 繊維素材の染色(必要な場合)
- 樹脂の製造
- 樹脂の塗布
- 転写印刷(必要な場合)
- ニューロシス加工
- 表面処理
- 検査
主にPVCやPU樹脂、染料、添加剤、繊維素材などが使用されます。
繊維素材を染料で染色し、合成皮革の表面に風合いを出します。
原料となる樹脂を製造します。PVCの場合は、塩化ビニルモノマーとプラスチック化剤を反応させて生成します。
原料の樹脂を、繊維素材の上に塗布します。これによって、合成皮革の基材が作られます。
繊維素材の表面に、花柄や文字などを印刷します。
塗布された樹脂を加熱・圧延し、柔軟性を持たせます。
加工した合成皮革の表面に、光沢を出すためのコーティングや、汚れや摩擦に強くするための保護剤を塗布します。
最終的な製品の品質を確認します。
以上のような工程を経て、プラ・合成皮革製品が完成します。なお、一部の製品では、上記の工程に加えて、型押し加工やエンボス加工などを行うことで、より本物の皮革に近い風合いを出すこともあります。
国内データ
日本のプラ・合成皮革製造業に関する国内データをいくつか紹介します。
- 2019年時点で、プラ・合成皮革製造業の年間生産額は約1,312億円、従業員数は約8,200人となっています。
- 2019年には、日本国内で合成皮革の生産量は約63,000トン、輸出量は約4,500トン、輸入量は約31,000トンでした。また、合成皮革の国内需要は約89,500トンであり、自給率は約70%となっています。
- 日本国内で生産される合成皮革製品の中で、最も生産量が多いのは車両用シートや内装材で、その割合は約40%となっています。次いで、衣料品やバッグ、靴などが続きます。
(出典:経済産業省「平成31年度産業連関表による統計-表Ⅳ-2-1-2」
(出典:日本合成皮革工業会「平成31年度合成皮革統計報告書」)
(出典:日本合成皮革工業会「平成31年度合成皮革統計報告書」)
近年では、環境に配慮した製品の需要が高まっており、プラ・合成皮革製品においても、再生プラスチックやバイオマスプラスチックなど、環境に配慮した素材の使用が進んでいます。
(出典:日本合成皮革工業会「平成31年度合成皮革統計報告書」)
主な企業
日本のプラ・合成皮革製造業界には、多数の企業が存在しています。その中でも、大手メーカーとして知られる企業をいくつか挙げます。
- 日本エイサー株式会社
- 株式会社アサヒフロンティア
- 株式会社イノテックス
- イトーキ株式会社
- 株式会社オーハシテクニカ
- 株式会社カネカ
- 株式会社クラレ
- 三菱化学株式会社
- ニッケル化学株式会社
- 東レ株式会社
これらの企業は、車両用シートやインテリア、衣料品やバッグ、靴など、多様な製品を製造しています。また、環境に配慮した製品の開発や、リサイクル素材の使用など、持続可能な社会の実現に向けた取り組みも進めています。