銀杏(いちょう)

銀杏(Ginkgo biloba)とは?基本情報と特徴

銀杏(いちょう/学名:Ginkgo biloba)は、銀杏科(Ginkgoaceae)に属する落葉広葉樹であり、現存する中で最古の植物のひとつとして知られています。およそ2億7000万年前から形態をほぼ変えずに現代に残る「生きた化石」として、世界中で注目されてきました。

原産は中国で、現在は日本、韓国、ヨーロッパ、北アメリカなどでも広く植栽されています。街路樹や神社仏閣の境内樹、さらには薬用植物・木材資源として、多用途にわたって活用される貴重な樹種です。

用途:木材から健康食品・薬用まで多方面に活用

銀杏の木材およびその副産物は以下のように多目的に利用されています:

  • 木材用途
    • 家具材:小型家具、文机、装飾棚
    • 建築材:内装材、天井板、神社仏閣の建築部材
    • 工芸・美術材:仏像、彫刻、文具、装飾品
  • 非木材用途
    • 種子(ギンナン):食用・健康食品
    • 葉:健康補助食品・漢方薬原料(血流改善など)

柔らかく加工しやすい性質と独特の色合いにより、工芸品・仏具・高級文具などに適しており、実用性と美観を兼ね備えた素材です。

色味:淡黄色〜薄いオレンジで上品な印象

銀杏材は淡黄色〜薄橙色

色変化が少なく、時を経ても自然な美しさを保つため、長期間の保存・使用に適した美術品・建築内装材として評価されています。

硬さ・加工性

銀杏の木材は比較的柔らかく、軽量で加工性が非常に高いという特性を持ちます。彫刻刀やノミの通りも良く、手道具での造形が可能です。

項目 数値・評価
気乾比重 約0.40〜0.50 g/cm³
Janka硬さ 約2,000〜2,500 N(軟質広葉樹)
加工性 非常に良好(彫刻・研磨・接着性に優れる)

ただし、柔らかさゆえに傷や凹みが生じやすいため、保護塗装や適切な使用環境が推奨されます

重量:軽量で扱いやすい広葉樹材

乾燥比重は0.4〜0.5 g/cm³程度と軽量で、運搬や加工の負担が少なく、高齢者や子供向け製品、室内装飾品にも適しています。

産地と供給状況

銀杏は以下の地域で広く植栽・管理されています:

  • 中国:原産地。種子・薬用原料の主要供給地
  • 日本:街路樹・社寺林として広く定着。北海道から九州まで植栽
  • 韓国・台湾:庭園樹・景観樹として利用
  • 欧米:都市緑化樹・薬用作物として普及

木材用途としての供給は限定的ですが、副産物(種子・葉)の産業利用が拡大しており、健康産業や栄養補助食品業界との連携も進んでいます。

分類・科目

銀杏は銀杏科(Ginkgoaceae)に属し、現代ではこの科に唯一残る現存種とされています:

  • 銀杏属(Ginkgo):現存するのは Ginkgo biloba のみ

恐竜時代から形を変えずに生き残った「生きた化石」としても知られ、学術的・文化的にも貴重な植物です。

銀杏の課題と展望

銀杏の活用には以下のような課題と可能性があります:

  • 木材の柔らかさによる傷つきやすさ(表面処理で対応)
  • 大径材の供給は限定的(植栽樹からの選定が必要)
  • 種子の臭気問題(銀杏の実)(加工・処理技術で対応可能)

一方、

  • 仏像・彫刻材としての伝統的価値の継承
  • 葉・種子の機能性研究による薬用・健康食品産業への展開
  • 都市緑化樹・景観樹としての耐環境性と美観の評価

など、工芸・薬用・都市設計の各分野で重要性が高まりつつあります。

まとめ:銀杏の魅力と活用可能性

  • 淡黄色の優雅な木肌と緻密な木目
  • 軽量で彫刻・仏像などの精密加工に最適
  • 家具・文具・建築・工芸と用途が広い
  • 葉・実は健康食品・薬用としても注目されている
  • 世界中で植栽される文化的・生態的に価値の高い樹種

銀杏は、古代から続く生命の象徴としての価値と、加工性・美観・多用途性を兼ね備えた、希少で魅力ある木材です。今後も、建築・工芸・健康分野においてその存在感を発揮し続けるでしょう。

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