PMI(購買担当者景気指数)とは(基本の定義)
PMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)は、企業の購買担当者(サプライチェーン担当者など)へのアンケート結果を基に作成される景気の先行指標の一つです。毎月発表されることが多く、製造業(Manufacturing)や非製造業・サービス業(Services)、両者を合算した総合(Composite)などの形で公表されます。
PMIの強みは、企業活動の「いま起きている変化(増えた・変わらない・減った)」を早いタイミングで捉えられる点にあります。決算やGDPのように確定値が出るまで待たず、需要・生産・雇用・納期などの変化を素早く把握できるため、企業の意思決定や金融市場の見通し判断で広く使われています。
PMIが「50」を境に語られる理由(拡大・縮小の読み方)
PMIは一般的に0〜100の範囲で示され、50が景況の分岐点とされます。50を上回ると拡大(改善)、50を下回ると縮小(悪化)を示すのが基本的な解釈です。
ただし実務では「50を超えた/割った」だけでなく、次の見方が重要です。
- 水準:拡大・縮小の方向感(50超かどうか)
- 変化幅:先月から改善しているのか悪化しているのか
- 内訳:新規受注・雇用・納期など、何が動いたのか
PMIの算出の考え方(ディフュージョン・インデックス)
PMIは「増加」「変化なし」「減少」といった回答を単一の数値にまとめるディフュージョン・インデックスの考え方で作られます。ざっくり言うと、改善の回答が増えるほど指数が上がり、悪化の回答が増えるほど指数が下がります。
この仕組みにより、企業現場の体感に近い「方向性」を捉えやすく、毎月の景気変化を追いやすい指標になっています。
PMIの代表的な構成要素(何を聞いている指標か)
PMI(特にS&P Global系のPMI)は、代表的に次の5つの要素を組み合わせた総合指数として説明されることが多いです。
- 新規受注(New Orders)
- 生産(Output)
- 雇用(Employment)
- 仕入先納期(Suppliers’ Delivery Times:指数は逆向きに扱われることがある)
- 購買在庫(Stock of Items Purchased)
また、S&P GlobalのPMIでは、これらの構成要素を加重平均(例:新規受注30%、生産25%、雇用20%、納期15%、購買在庫10%)として扱う説明が一般的です。
ISMのPMIは「同じPMI」でも中身が少し違う
米国で注目度が高いISM(Institute for Supply Management)の製造業PMIも、主要5項目(新規受注・生産・雇用・納期・在庫)から作られますが、等ウェイトで構成されると説明されています。
つまり「PMI」という名前が同じでも、公表機関(S&P GlobalかISMか等)によって設計思想や集計が異なる点は、読み間違いを防ぐ上で重要です。
製造業PMI・サービスPMI・コンポジットPMIの違い
PMIは「製造業だけ」を見るとは限りません。よく使われる3つを整理すると次のとおりです。
| 種類 | 対象 | 読みどころ |
|---|---|---|
| 製造業PMI | 工場・メーカー中心 | 輸出、在庫循環、設備投資に影響しやすい |
| サービスPMI | 非製造業・サービス中心 | 内需、雇用、消費動向に関係しやすい |
| コンポジットPMI | 製造業+サービス | 景気の総合的な温度感を掴みやすい |
PMIはなぜ「先行指標」と言われるのか
購買担当者は、部材の発注、在庫の積み増し、納期遅延への対応など、需要の変化を早い段階で受け取ります。そのためPMIは、景気の結果(GDPや鉱工業生産の確報など)よりも一歩早く、企業活動の曲がり角を示しやすいとされています。
特に「新規受注」と「生産」は、景況の方向性を読み解くうえで注目されやすい項目です。新規受注が先に変化し、遅れて生産や雇用が追随する、という見方が実務ではよく使われます。
日本のPMIを見るときのポイント
日本では、製造業PMIやサービスPMIとしてS&P Globalが調査・公表する指数(例:auじぶん銀行の日本PMI)が注目されます。製造業とサービスの両方が公表されるため、製造業だけが弱いのか、内需(サービス)も鈍っているのかを切り分けて把握しやすい点がメリットです。
また、ニュースでは「50を下回り何カ月連続で縮小」といった表現がよく出ますが、実務では次の観点も合わせて確認すると判断精度が上がります。
- 新規受注・輸出受注の強弱(需要サイドの変化)
- 仕入先納期(供給制約が強いのか、緩和しているのか)
- 投入価格・販売価格(コスト増が価格転嫁されているか)
- 雇用(人手不足・採用姿勢が景況感に与える影響)
PMIが金融市場に与える影響(株・為替・金利)
PMIは発表頻度が高く、速報性もあるため、発表直後に市場が動くことがあります。一般的なイメージとしては次のとおりです。
- 予想より強いPMI:景気が底堅い → 株価の支え、金利上昇圧力、通貨高材料になりやすい
- 予想より弱いPMI:景気減速懸念 → 株安材料、金利低下圧力、通貨安材料になりやすい
ただし、インフレ局面では「PMIが強い=利上げ観測が強まる」など、市場の関心(景気か物価か)によって反応が変わることもあります。
政策決定・企業経営でのPMI活用(現場での使い方)
PMIは投資家だけでなく、企業や行政でも意思決定材料として使えます。
製造業・サプライチェーンでの活用例
- 需要予測の補助:新規受注の変化を見て、増産・減産の判断材料にする
- 在庫戦略:在庫が積み上がっているのか、取り崩し局面かを読む
- 調達リスク管理:納期の悪化(遅延)や改善(正常化)から供給制約を見極める
- 価格交渉:投入価格の上昇・下落の兆しを把握し、購買計画に反映する
政府・中央銀行での活用例
景況の変化を早期に捉え、景気対策や金融政策の判断材料として参照されることがあります(もちろんPMI単体で決めるのではなく、複数指標とセットで見ます)。
他の経済指標との関係(何と一緒に見るべきか)
PMIは便利ですが万能ではありません。読み違いを防ぐために、次の指標と合わせて見るのが実務的です。
- 鉱工業生産・稼働率:実際の生産量の裏取り
- 失業率・有効求人倍率:雇用環境の裏取り
- GDP成長率:景気の「結果」の確認
- CPI(消費者物価指数):物価要因で市場が動く局面の補助線
PMIの限界(注意点と落とし穴)
PMIには優れた点がある一方、限界もあります。SEO的にもここは丁寧に押さえておくと記事の信頼性が上がります。
- 方向性に強く、量(規模)に弱い:増減の方向は分かりやすい一方、実際にどれだけ増えたかは別指標が必要
- 調査対象の構成に依存:サンプルの業種・規模・地域構成によって影響を受ける可能性
- 一時要因でぶれやすい:災害、物流混乱、急な為替変動などで短期的に歪むことがある
- 国・機関で設計が違う:S&P GlobalとISMなど、同じ「PMI」でも作り方や重みが異なる
よくある質問(FAQ)
- PMIが50を少し上回っただけでも「景気は強い」と言えますか?
- 一概には言えません。50超は拡大方向を示しますが、勢いの強弱は「どれくらい上回っているか」「先月から改善しているか」「新規受注など中身が伴っているか」で判断します。
- 「製造業PMI」と「サービスPMI」はどちらを重視すべきですか?
- 国や局面によって変わります。製造業の比重が大きい局面では製造業PMIが効きやすく、内需・雇用・消費の影響が強い局面ではサービスPMIが重要になります。総合判断にはコンポジットPMIも有効です。
- 仕入先納期(サプライヤー納期)は、なぜ注目されるのですか?
- 納期の遅れは供給制約や需要の強さを示唆することがあるためです。PMIの設計上、納期指数は他項目と向きを合わせるために「逆向きに扱う」ケースがあります。
- PMIと株価の関係はいつも同じですか?
- いつも同じではありません。インフレ局面では「景気が強い=利上げ観測で株に逆風」になる場合もあり、市場が何を最重視しているか(景気・物価・金融政策)で反応が変わります。
- PMIはどのくらい早く発表されるのですか?
- 月次で公表されることが多く、月中に速報(フラッシュ)が出る国・機関もあります。速報性が高い点が、PMIが注目される理由の一つです。
- PMIだけで景気判断をしてもいいですか?
- おすすめしません。PMIは方向感を掴むのに強い一方、確報統計(生産・雇用・GDPなど)で裏取りし、複数指標を組み合わせて判断するのが安全です。
まとめ(PMIを正しく使うコツ)
PMI(購買担当者景気指数)は、製造業やサービス業の現場感を素早く反映する先行指標として、企業・政策当局・投資家に幅広く活用されています。基本は「50が分岐点」ですが、実務では水準・変化幅・内訳(新規受注や雇用など)をセットで読むことが重要です。
また、PMIは機関や国によって作り方が異なるため、「どのPMIを見ているか」を揃えたうえで、他の経済指標と併用して判断すると精度が上がります。PMIを“早めの警報装置”として上手に使うことが、景況判断の近道です。

