PMI(購買担当者景気指数)とは
PMI(Purchasing Managers’ Index)は、購買担当者景気指数とも呼ばれ、製造業の景気動向を示す経済指標の一つです。PMIは、月ごとに発表される調査結果をもとに算出され、製造業の拡大・縮小を判断するために広く用いられています。
構成要素
PMIは、以下の5つの構成要素から成り立っています。
- 新規受注
- 生産量
- 雇用
- 在庫水準
- 供給者の納期
これらの要素は、それぞれ製造業の活動を反映しており、企業の購買担当者からの回答に基づいて調査されます。
解釈と重要性
PMIは、50を基準としています。50を超える値は、製造業が拡大していることを示し、50を下回る値は、製造業が縮小していることを示します。PMIは景気の先行指標とされており、国内外の経済状況を把握する際に重要な情報源となります。
日本のPMI推移
年 | 製造業PMI | 非製造業PMI |
---|---|---|
2022年 | 52.7 | 54.0 |
2021年 | 52.0 | 53.8 |
2020年 | 49.9 | 50.8 |
2019年 | 52.4 | 53.2 |
2018年 | 52.5 | 53.6 |
2017年 | 52.8 | 54.2 |
2016年 | 51.9 | 52.8 |
2015年 | 51.8 | 53.2 |
2014年 | 52.6 | 54.1 |
2013年 | 51.2 | 52.8 |
ご覧の通り、日本のPMI指標は2013年から2019年まで緩やかに上昇していましたが、2020年に新型コロナウイルスの感染拡大の影響で大きく下落しました。その後は持ち直しつつありますが、2019年までの水準には達していません。
PMI指標は景気の先行指標とされており、日本の景気は依然として回復途上にあると言えます。
国際的なPMI
各国のPMIは、国際的な調査機関や金融機関によって発表されています。例えば、アメリカのPMIは、ISM(Institute for Supply Management)によって発表されています。また、中国のPMIは、中国国家統計局が発表しています。これらのPMIは、国際的な投資家や政策立案者によって注視されており、世界経済の動向を把握する上で重要な役割を果たしています。
2023年1月から5月までの各国のPMI指標の推移は以下の通りです。
国 | 製造業PMI | 非製造業PMI |
---|---|---|
米国 | 53.8 | 52.8 |
中国 | 50.5 | 53.5 |
ドイツ | 52.4 | 53.7 |
英国 | 51.7 | 56.3 |
フランス | 56.3 | 58.1 |
イタリア | 55.1 | 58.0 |
スペイン | 54.7 | 58.6 |
カナダ | 57.1 | 58.4 |
メキシコ | 53.2 | 54.2 |
ブラジル | 49.9 | 52.4 |
PMIと金融市場
PMIの発表は、金融市場に大きな影響を与えることがあります。PMIが予想よりも良好な結果を示すと、株価が上昇し、為替レートにも影響を与えることがあります。逆に、PMIが予想を下回ると、株価が下落することがあります。投資家は、PMIを用いて経済の先行きを予測し、投資判断を行います。
PMIと政策決定
PMIは、政府や中央銀行が経済政策を立案する際にも参考にされます。PMIが示す製造業の拡大・縮小状況によって、政策立案者は景気対策や金融政策を検討する際に有益な情報を得ることができます。例えば、PMIが低下し続ける場合、景気対策の必要性が高まることがあります。
他の経済指標との関係
PMIは、他の経済指標とも関連性があることが一般的です。例えば、PMIが高いと、生産や雇用が増加する傾向にあり、これによってGDP(国内総生産)が増加することが期待されます。また、PMIが低い場合、製造業の雇用が減少する可能性があり、失業率に悪影響を与えることがあります。
PMIの限界
PMIは、製造業の景気動向を示す有益な指標であるものの、いくつかの限界が存在します。
サービス業をカバーしていない
PMIは、製造業に焦点を当てているため、サービス業の状況を反映していません。サービス業が経済全体の大部分を占める国では、PMIだけでは経済全体の状況を把握することが難しい場合があります。
質的な側面を評価できない
PMIは、量的な指標であるため、製造業の質的な側面(例:製品のイノベーションや技術革新)を評価することができません。
一部の業界に偏りがある可能性
PMIは、調査対象となる企業が一定の業界に偏っている場合、その業界の動向に影響を受けやすくなります。そのため、PMIが経済全体の状況を正確に反映していない場合があります。
補完する指標
PMIの限界を補完するために、他の経済指標と併せて分析することが有益です。以下に、PMIと併せて注目すべき経済指標をいくつか紹介します。
サービス業景気指数(SMI)
サービス業の景気状況を示す指標で、PMIと同様に、新規受注、雇用、在庫などの要素から成り立っています。サービス業の動向を把握することができます。
失業率
労働市場の状況を示す指標で、景気の先行指標とされています。高い失業率は、経済が停滞していることを示唆することがあります。
GDP成長率
国内総生産の成長率を示す指標で、経済全体の成長状況を把握することができます。GDP成長率が高い場合、経済が拡大していると判断されます。
消費者物価指数(CPI)
物価の変動を示す指標で、インフレやデフレの状況を把握することができます。インフレ率が高い場合、物価が上昇していることを示します。
信頼性と信憑性
PMIは、経済学者や投資家、政策立案者にとって信頼性が高いとされる指標です。しかし、信頼性を維持するためには、以下の要素が重要です。
調査対象企業の選定
適切なサンプルを選定することが、PMIの信憑性を保つ上で重要です。調査対象企業は、業界や規模が多様であることが望ましいです。
データの品質
回答者の選定や調査手法の適切さが、PMIの信頼性に影響を与えます。データの品質を維持するためには、回答者の適切な選定や調査方法の改善が求められます。
定期的なレビュー
PMIは、継続的に更新される指標です。定期的に調査対象企業や要素をレビューし、適切な変更を行うことで、信頼性が維持されます。
国際的なPMI比較
各国の製造業を比較する際には、国際的なPMI指標が役立ちます。各国のPMIを比較することで、製造業の競争力や景気状況を把握することができます。
先進国と新興国の比較
先進国のPMIが高い場合、技術革新や高付加価値製品の生産が増加していることを示す場合があります。一方、新興国のPMIが高い場合、労働力や生産コストの低さが競争力の源泉であることが考えられます。
地域別の比較
地域ごとのPMIを比較することで、その地域の経済状況や製造業の特性を把握することができます。例えば、アジア地域のPMIが高い場合、電子部品や自動車産業などの競争力があることが示されます。
PMIを活用した投資判断
投資家は、PMIを用いて、製造業に関連する投資判断を行うことができます。PMIが高い場合、製造業が好調であることを示し、その業界や関連企業への投資が有望である可能性があります。
ただし、PMIだけに頼らず、他の経済指標や企業の業績、将来展望なども考慮することが重要です。また、PMIは先行指標であるため、将来的な景気動向を予測する際にも役立ちますが、その予測が必ずしも正確であるとは限らないことに注意が必要です。
まとめ
PMIは、製造業の景気動向を示す重要な経済指標であり、政策立案や投資判断に活用されます。ただし、その限界を理解し、他の指標と併せて分析することが重要です。国際的な比較や地域別の分析を行うことで、さらに深い理解が得られます。